大阪市と大阪府が行っている大卒者向け行政職の採用試験で、女性が合格者に占める割合が7~8割と高水準だ。択一式試験をなくしてグループワークなど人物重視に選考方針を改めたことや、団塊世代の大量退職に対応するために採用数を増やしたことが影響している可能性があるという。
全国の市・区では女性の合格者は半分程度
大阪市が2013年春に行った試験では、1次試験では760人が受験し、最終合格者は65人だった。15.2倍の狭き門だが、合格者のうち女性は53人を占め、割合にして82%だった。府の試験では1次試験に1121人が臨み86人が合格。そのうち女性は67人で、割合にして78%だった。
実は女性の合格者の割合は、市も府も上昇傾向だ。市は11年度が40%、12年度が60%、13年度が前出のとおり82%と大幅に上昇している。府は10年度が53%、11年度が71%、12年度が67%、13年度が78%だ。
09年に内閣府男女共同参画局が発表した「地方公務員における女性の採用・登用等に関する事例集」では、1995~2007年の地方公務員採用試験合格者に占める女性の割合の推移を紹介している。都道府県の試験に合格した人の割合は20.8%~32.3の範囲で推移しており、市・区の合格者の割合はさらに高く45.8%~53.4%だ。この統計は、大卒行政職に対象を絞っている訳ではないので、そのまま比較することはできないが、大阪府・市の女性合格者の割合が全国的に見ても高い傾向はうかがえる。
アピール力の強さが合格率押し上げた?
この傾向について、市の任用調査部では「特段の分析はしていない」と話すが、府の人事委員会では二つの可能性を挙げた。ひとつが、試験方式の変更だ。
従来、市も府も、1次試験の択一式問題には、内閣府の外郭団体「日本人事試験研究センター」(東京都)が作成した試験問題を使用してきた。だが、大阪府知事を経て大阪市長を務める橋下徹氏が、天下り批判を背景に府知事時代の10年に年会費170万円の支払いを拒否。そのため、自前の試験を余儀なくされた。
このため、府は11年度から市は12年度から新方式に切り替えた。市も府も3次試験まであり、いずれも1次試験でエントリーシート(ES)、小論文を評価し、2~3次試験では論文、グループワーク、面接、適性試験を行う。
13年度の府のエントリーシートでは
「あなたが大阪府職員を志望した理由を具体的に教えてください。また、大阪府職員としてぜひとも取り組んでみたいことを一つあげ、その理由とあわせて説明してください」
といった4項目を記入する仕組みになっており、「人物重視」をうたっている。
前出の合格率の推移を見ると、府は11年度から市は12年度を境に合格率が大きく伸びており、女性のアピール力の強さが合格率を押し上げた可能性もある。
もうひとつの可能性が、試験方式と同時に募集人数が変わった点が影響しているのではないか、という点だ。府が旧試験を行っていた10年度は15名程度しか募集していなかったのに対して、新試験に移行した11年度には30名を募集している。12、13年度は65人と倍増している。府では、団塊世代の大量退職に備えた措置だと説明している。
市も同様で、旧試験の11年度は22歳から32歳を対象に30人を募集したのに対して、新試験の12年度は22歳から25歳を対象に65人を募集している。13年度は55人募集した。門戸が広がった分、何らかの原因で女性の合格率が上がった可能性があるということらしいが、それ以上のことははっきりしない。