都の試算だと年当たり0.43兆円と小額
確かに都の約3兆円の試算は7年間の総額で、年間当たりだと0.43兆円と小額。総額約3兆円の経済波及効果については「相対的に大きいかどうかは議論が分かれる」(第一生命経済研究所・熊野英生主席エコノミスト)という。これは東京都とオリンピック・パラリンピック招致委員会が「1964年の東京五輪の施設を再利用し、コンパクトな会場設置」を目指し、施設整備費を低く見積もっていることも影響しているようだ。英国政府が今年7月、ロンドン五輪の経済波及効果(2004~12年までの9年間)をGDPの2.0~2.1%(310億~330億ポンド)とし、36万~40万人の雇用を創出したと発表したのと比べると、東京都の試算が見劣りするのは否めない。とりわけ、五輪誘致を進めた経済界などには不満が大きい。
このためか、日本経済新聞は、大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストの試算として「今後7年間に観光産業が倍増すると想定し、経済効果は約95兆円と分析する。安倍政権の国土強靭化計画が進めば約55兆円の効果を見込めるため総額150兆円規模になる」との見方を紹介している。これにはオリンピックとは直接関係のない首都高速道路などの整備費用も含まれている。日経以外の一部マスメディアも木野内氏の150兆円の試算を引用しており、東京五輪の経済波及効果を期待しているようだ。