女優の佳那晃子さん(57)について、脳死宣告から回復したとの見出しでスポーツ紙各紙が報じ、ネット上で、「回復することはないのに」と報道に疑問が相次いでいる。厚労省でも、「誤解される恐れがある」と困惑している。
映画「四季・奈津子」「極道の妻たち」などで知られる佳那晃子さんは、闘病生活中であることが所属事務所から発表され、ファンらに衝撃を与えた。
ツイッターなどで臓器移植への不安が
報道によると、晃子さんは2013年1月10日夜、静岡県熱海市内の自宅で突然倒れ、近くの病院に救急搬送されたが、くも膜下出血と診断された。それも、最も重い重度5で、医師からは「脳死」か「植物状態」と宣告されたというのだ。
翌11日に約10時間の手術を受けて加療を続け、3月に、回復の見込みがほとんどない植物状態だとされた。ところが、4月になって、手を握り返すなどの反応が見られるようになった。6月には、声をかけると目を開けたりするまでになり、県内のリハビリ病院に転院した。現在は、もっと反応がよくなって生命の危機から脱し、まだ話せないものの、1年後に歩いて帰れるようリハビリ生活を送っているという。
こうした病状について、スポーツ紙各紙はサイト記事などで、かなり断定的な見出しで報じた。
スポーツニッポンは、「佳那晃子『脳死』宣告されていた…くも膜下出血から手足動くまで回復」、中日スポーツは、「佳那晃子 脳死宣告受けていた 1月にくも膜下出血 奇跡的に回復」と見出しを打った。さらに、サンケイスポーツは、記事中で「植物状態」には触れず、「『脳死』の宣告を受けた」とだけ書き、見出しは「佳那晃子『脳死』宣告から奇跡的な回復」とうたった。
しかし、これらの報道に接した読者からは、ツイッターなどで臓器移植への不安が漏れるようになっている。「こういうことがあるから、脳死とか全然信用できない」「もうちょい考えなくっちゃかなあ。。」といった声だ。
スポーツ紙各紙「コメントできません」
一方、記事の内容が事実なら、「脳死宣告」があったとは言えないのではないかという指摘も相次いでいる。
「初見で脳死か植物状態って診断されたのね、ぜんぜん脳死宣告じゃないやん。記事の書き方が悪い」
「これって医者が脳死と呟いただけで実際に脳死判定が行われたわけでは無いんだよね。脳死でも生き返るって騙されちゃうよこの書き方(´・ω・`)」
「脳死の理解に誤解を招きかねない記事。いかんなあこういうのは」
厚労省の臓器移植対策室では、スポーツ紙各紙の報道について、「誤解される恐れがあり、それは困ります」と取材に答えた。
脳死について、臓器移植を前提として国の判定基準は厳密に決まっており、それに沿って診断したときは、「回復できない不可逆的な変化」という位置づけになっているというのだ。厚労省ではこれまでに、脳死と判定を受けてから回復したというケースは把握していないともしている。
ただ、医師が臓器移植を前提とせず、個別の基準で脳死と宣告するのは、適切な診断なら問題はないとした。佳那晃子さんの場合もおかしいとは言えないとしており、脳死か植物状態と宣告されたと記事中に触れられたことについても、問題ないとの見方を示した。
報道への批判について、スポーツニッポンのメディア編集部は「コメントできません」、東京中日スポーツの報道部は「個別の取材に関しては、一切お答えできないです」と取材に答えた。記事中で「植物状態」にも触れなかったサンケイスポーツでは、発行元の産経新聞社が「個別の記事内容についてはお答えできません」(広報部)とだけコメントしている。