台風による増水のなか大阪市で、川でおぼれた小学生を中国人留学生が身を挺して救出する「お手柄」があった。留学生には大阪府警から感謝状が贈られるなど、勇気ある行動が人々の賞賛の的となっているが、故郷の中国でもその活躍は大きく報じられ、「英雄」として称えられている。
日中で時の人となったのは、上海出身の厳俊さん(26)だ。報道によれば厳さんは3年前に来日、来春からは大学院の博士課程に進学予定で、救出劇のあった2013年9月16日は淀川沿いの堤防で日課のジョギングを行っていた。
あの片山さつき先生も絶賛!
この日の大阪は台風一過の晴天が広がっていたが、川は依然として大幅に増水していた。
「助けて!」
そんな川から、子どもの声が響いた。厳さんが振り向くと、そこには今にも沈みそうになりながら、濁流の中を流される男児(9)の姿が。上流で写真を撮影中、足を滑らせて川に転落したのだ。
厳さんはすぐさま、川に飛び込んだ。体力にはそれなりに自信があったが、流れは思った以上に早い。ひとまず岸に戻り、近所の人が持ってきたロープを体に巻きつけ、再び川へ。岸から約10メートル離れた地点で男児を確保したところを引き上げられたという。幸い、男児は大きなケガもなく無事だった。
厳さんはマスコミの取材に偉ぶる様子もなく、
「助けなければいけない、と自然に思った」
「あの時は人を助けることがいちばん大事ですから、怖くなる時間はない」
「成人だったら子どもを助けるべきだと思う」
と、擦り傷だらけの手で語った。その振る舞いには日ごろ反中国的な声が多いネットでも感動が相次ぎ、あの片山さつき参院議員でさえ、
「中国人の組織的生活保護不正受給や、海外療養費詐取を、厳しく追及しておりますが、今日は淀川に飛び込んで子どもを助けてくれた中国人留学生がおられた、ということです。尊い行動に感謝し敬意を表します」
と賛辞を贈ったほどだ。
中国・人民日報も取り上げる時の人に
厳さんの本国・中国でも、このニュースは大きな話題になった。中国共産党の機関紙・人民日報や国営通信社・中新社を始め、多くの現地メディアがこの話題を掲載、中には、わざわざCGによる「再現VTR」をつけたところさえある。登場人物の髪がフサフサで、坊主頭の厳さんにさっぱり似ていないのはご愛敬だ。
また中国側では厳さんの勇敢な行動はもちろんのこと、日本での暖かい反応も驚きだったらしい。人民日報などが「日本ネットでは『英雄』との声も上がっている」と紹介したのを始め、各紙がその反響の大きさに少なからず言及する。日中関係の「恩讐」を超え日本側が素直に厳さんを評価したことは、かなり好印象を与えたと見られる。
日本に対する強硬な主張を展開し、中国における「反日」の急先鋒的存在の人民日報系メディア・環球時報でさえ、記者の見解として、
「現在日中関係は、釣魚島(尖閣諸島)や歴史問題で悪化が続いている。日本のメディアでは中国のマイナス面が伝えられることが多く、中国や中国人への印象は悪くなる一方だった。厳俊さんの業績は、この状況を改善する好材料になるだろう」
との論評を掲載した。環球時報がこうした論評を掲載することは異例で、その感激ぶりがうかがえる。