トヨタ自動車のカローラが1966年の発売以来、世界の累計販売が2013年7月末に4000万台を突破した。単一車種(銘柄)が4000万台を突破するのは世界で初めて。
カローラは1997年に累計販売が2265万台となり、それまでトップだったフォルクスワーゲンのビートル(2134万台)を抜いて「世界のベストセラー」となった。
ライバルのゴルフとの差は広がる
現在のライバルは同じくフォルクスワーゲンのゴルフだ。こちらは1974年の発売以来、世界で3000万台以上を販売している。カローラが2002年以降、11年連続で年間100万台以上を販売するのに対して、ゴルフは年間平均で70万台以上にとどまっており、カローラの「世界一」は当面揺らぎそうにない。
しかし、かつての看板車種も日本国内ではユーザーの高齢化が目立ち、かつての人気を失っているのも事実。トヨタはカローラにもハイブリッドカー(HV)を投入し、CMにキムタク(木村拓哉氏)を起用するなど巻き返しを図るが、ほころびが見えなくもない。
カローラの販売は国内よりも海外が主要マーケットとなっている。トヨタによると、国内の累計販売約1225万台に対して、海外は約2777万台で、約7割を海外が占めている。現在、カローラは150以上の国・地域で販売し、日本の2か所を含む世界15か所の工場で生産するグローバルモデルだ。
だが、海外生産拠点13か所のうち、先進国は米国とカナダのみ。残るは中国2か所、台湾、タイ、ベトナム、インド、南アフリカ、ベネズエラ、パキスタン、トルコ、ブラジル各1か所と、アジアを中心とする途上国が目立つ。このため一口にカローラといっても仕様は日本と異なっており、途上国のユーザーに合った海外専用モデルが現地で生産されている。
カローラの4000万台達成について、トヨタ自動車でカローラの開発を担当する安井慎一チーフエンジニアは、「47年、11代にわたり、世界で4000万人以上のお客様にご愛顧いただいたことに感謝申し上げる。カローラは世界中のお客様に育てていただいたクルマ。今後もカローラのDNAを進化させ、クルマづくりに邁進したい」と語っている。
国内ではプリウス、アクアに及ばず
しかし、アジアなど途上国では人気のカローラも、日本国内の人気はいまひとつだ。1968年から国内では33年間、新車販売台数で首位を占めてきたが、2002年にホンダフィットに首位の座を明け渡した。その後、トップに返り咲く場面もあったが、2009年には同門トヨタのプリウスに首位を奪われた。
日本自動車販売協会連合会によると、2013年1~6月の最新データ(乗用車ブランド順位=軽を除く)で、カローラは8位。1位はプリウス、2位はアクアと、同門トヨタのHVが上位を占めている。このためトヨタは8月6日、カローラ(アクシオとフィールダー)に初のHVを投入。国内販売のテコ入れを図った。
かつてカローラは1970年代から80年代にかけ、レビンやリフトバックなど、若者に人気のモデルがあった。1990年代にかけてもカローラFXなど、少し高級かつスポーティーで、若者に「乗ってみたい」と思わせるクルマがあった。しかし、近年のカローラに昔の面影はなく、国内ではユーザーの高齢化が進んだ。
今、カローラはCMにキムタクを起用し、「ハイブリッドをさりげなく カローラはジーンズになった」と宣伝している。だが、日本のモータリゼーションを支えたカローラは、デビュー当時からずっと国民的大衆車であり、その意味でジーンズそのものだったはず。敢えて若々しいイメージを作らねばならないところに、高齢化したカローラの「厳しい現実」を感じる人もいそうだ。