コンビニエンスストア利用者には興味深い判決が2013年8月30日に東京高裁で出た。コンビニ最大手の「セブン-イレブン・ジャパン」に対し、北海道や大阪府、兵庫県の加盟店主4人が、販売期限の迫った弁当などを値引きする「見切り販売」を制限されて損害が生じたとして計約1億4000万円の損害賠償を求めていた訴訟で、東京高裁の斎藤隆裁判長が「値引き販売を妨害した」として計1140万円の支払いを命じたのだ。
セブンは「上告する」
斎藤裁判長は、店舗指導する同社社員が原告らに「見切り販売をしたら店を続けられない」などと発言したと認定し、「事実上の強制があり、商品価格を決める権利を妨げた」との判断を示した。同社は「判決内容の一部が認められず遺憾。承服しかねるので上告する」とのコメントを出した。
見切り販売は消費期限の迫った食品を値引きして販売すること。閉店間際のスーパーやデパ地下で「3割引」「5割引」といった割引シールが貼られた弁当や総菜などが売られている光景は珍しくない。通常、売れ残ると廃棄することになるため、発生する損失を最小限に抑えるようと値下げして販売するのだ。
同社の見切り販売を巡っては、公正取引委員会が2009年に見切り販売の制限で排除措置命令を出した経緯がある。命令後は見切り販売できるようになり、食品廃棄に対し社会の批判的風潮が強まるなか、同社は加盟店の廃棄損失の15%を負担するようにもなった。
コンビニ業界は過去最高の出店競争
ただ、実際にセブンの全国約1万5500店舗で見切り販売を実施しているのは1%程度だといわれている。確かにスーパーなどに比べ、セブンで見切り値引きされた商品を目にする機会は滅多にない。その理由について、あるコンビニ大手幹部は「見切り販売の時間帯を狙った顧客が増加し、定価での販売に影響が出るうえ、ブランドイメージが低下するとの懸念があるからだろう」と指摘する。だからこそ、業界の一部には「セブンさんが廃棄損失を15%負担することで、加盟店が見切り販売に踏み切れないようにしているのでないか」との見方もある。
しかし、公取委の命令が出て以降、全国で「見切り販売しないよう指示された」などと同種訴訟が起こされ、裁判所の判断は分かれている。コンビニ業界では過去最高水準の新規出店競争となっており、過当競争が繰り広げられている。近隣にライバル店がオープンして売上低下に陥る店舗も出てきているだけに、同社の価格戦略に不満を持つ加盟店が同種訴訟を提起する可能性もあり、今後の動向が注目される。