アルバイト先の冷蔵庫の中に入ったり、食材の上に寝そべったりする「悪ふざけ写真」を、ツイッターやフェイスブックに掲載された飲食店やコンビニエンスストアが休業・閉店に追い込まれている。
冷蔵庫内の食材の廃棄や冷蔵庫そのものの入れ替え、店内の清掃と消毒と、店側の対応には相応のお金がかかるし、なにより「信用」に傷がついた。
個人経営のそば店も閉店
「餃子の王将」を展開する王将フードサービスは、男性客9人が裸で悪ふざけをする写真がインターネットに流出したために、営業停止していた金沢片町店を閉店する。「従業員は制止した」としているものの、「公共の秩序と善良な風俗に反する行為が行われ、お客様に多大なご迷惑をおかけいたしましたので、これ以上営業を続けていくことは許されない」と、2013年9月10日に発表した。
また同日、加害者の男性客10人を金沢中警察署に業務妨害と公然わいせつ罪で告訴した。
一方、従業員が店内の冷蔵庫に入った写真がネットに流出したとして営業を停止していた新潟近江店は、9月11日に再開。従業員は懲戒処分としたが、「営業再開を望むお客様からの沢山の声を踏まえ、勝手ながら今一度チャンスを頂き信用回復に努めさせて頂きたい」としている。
これより先、ステーキレストランを展開するブロンコビリーは、店員2人が冷凍庫内に入った写真が流れた足立梅島店を8月12日に閉店した。同店は、東海地方が本拠地のブロンコビリーにとって、関東での足がかりとして期待されている店舗だったという。
事件を起こした店員は、すでに解雇。ブロンコビリーは「おいしい料理と気持ちよいサービス、清潔で楽しい店づくりを通じて心地よいひとときを提供するという使命の実現に取り組み続けている全社・全従業員の努力に反した責任は重く、(同店が)このまま営業再開することは許されない」と判断した。
コンビニ大手のローソン高知鴨部店では、従業員がアイスクリーム用冷凍庫に入り横たわる写真をフェイスブックに投稿。本社は同店とのフランチャイズ契約を7月15日付で解除した。
大手チェーンばかりか、東京・多摩市のそば店「泰尚」も閉店。地元に根ざした個人経営の店だ。8月9日、アルバイトの学生が厨房にある大型食器洗浄機にからだを入れた画像をツイッターに投稿、ネットで炎上した。
その1か月後、店には「この度、一部の従業員達(多摩大学学生)による不衛生な行為により営業を停止させて頂くことになりました」と、閉店のお知らせが貼り出された。
「なにも閉店しなくても…」との声も
ひと昔前なら、アルバイトの従業員が悪ふざけをしたとしても、店が休業や閉店にまで追い込まれることはなかった。瞬く間に情報が拡散する、インターネット時代だからこそ起こり得たことで、おそらく当事者は「そんなつもりじゃなかった」だろう。
しかし、従業員が起こした事件ともなれば、企業側にも苦情が殺到。それに伴う信用低下に営業停止と痛手も大きい。
とはいえ、ネット上では「そもそも、閉店までしなければいけないの?」「閉店とか賠償とかはやりすぎ」といった声も。「不採算店の整理の口実では?」との指摘もみられる。
低賃金で働いているアルバイトの不満が原因とみられ、「店側がまいたタネ」との見方もないわけではない。
脳科学者の茂木健一郎氏はツイッターで、「バイトが、悪ふざけの画像をSNSにアップするのがマズイことは当然。そのバイトがおとがめを受けるのも当然。しかし、その結果の店舗閉鎖という経営判断は、明らかに行き過ぎで、お粗末。自身のお粗末な経営判断を棚に上げての損害賠償請求は、愚か。拍手する世間も、低レベル。以上。」と、一刀両断だ。