京都府出身のロックバンド「くるり」のボーカル&ギター、岸田繁さん(37)が、京丹後市に在日米軍基地を建設する計画について、ツイッターで苦言を呈した。
問題について知らなかった人も多いようで、ツイッター上では岸田さんのツイートをきっかけに意見が飛び交っている。
「京丹後なんて誰も何も知らないし、誰も文句言わんと思ってるんだろ」
2013年9月10日、岸田さんあてに米軍基地建設の反対を唱えるツイッターユーザーから以下のリプライが寄せられた。
「京丹後市に米軍基地建設の計画があります。日米両政府が『合意』、府知事は間もなく正式受入表明の見込み…。原発を日本海側に押し付けてきた歴史を振り返ることもなく、今度は米軍基地…。」
「私たちは反対の立場ですが、問題自体があまりにも知られていないことをなんとかしたいです」
このユーザーは問題への関心と情報を広げるため、ミュージシャンの岸田さんにリプライしたという。岸田さんはこの思いを受け止め、すぐに公式リツイートし、自分の意見を述べた。
「いろんな意見あれど、米軍基地に対するアレルギーと言うよりは、僕の生活基盤に近いところなので、戦々恐々といった気持ち。心理的不安と、絶望的感覚。申し訳ないけど、初めて沖縄の人たちの気持ちにリアリティを覚える。これから考える。」
9月11日未明には、
「暴論言います。京都の人達は歴史に甘んじてるし、中央は京都を舐めてる。リニア京都通過問題と京丹後米軍基地問題は並列と思いきや、直列だ。京都人として、炎上覚悟の暴論です。舐めんなよ。」
と怒りをにじませたツイートを投稿。正午すぎにも、
「どうせ作るなら大都市に原発、核廃棄物の貯蔵庫、米軍基地を作りゃあいいのに。京丹後なんて、誰も何も知らないし、誰も文句言わんと思ってるんだろう。」
「京都は京都市を含めた南部に人口も経済も集中している。逆に北部は未だに高速道路が繋がっていないし、JRも単線。インフラも遅れ気味で深刻な過疎を産んだのは、蜷川共産府政時代に府がやるべきことをやらなかったから。でも、そのおかげで残った自然があった。しかし、そのツケが来たということか。」
と、基地建設計画に反対する思いを語った。
府知事が9月17日に正式受け入れ表明する見通し
岸田さんのツイートに対し、主に京都府在住や出身の人から賛同意見が相次いで寄せられた。
「京丹後市出身です。京都府知事様は丹後くんだりなぞ京都市方面に全く影響もないし、喜んで差し上げるでしょう、そのぐらい離れているのも自然以外何もない田舎なのも自覚しています。が、とても悲しいです。やっぱり生まれ育った者としては」
「地区は違いますがそこは私の故郷です。空は時折自衛隊のヘリが飛び、海岸を走れば原発が見えます。夜の海には近づくなと言われたこともあります。更に米軍のレーダー基地。地元を愛して帰っている友人もいます。今私は広島に住んでいますが、不安、です」
「4年前の今日、一人旅で初めて、京丹後へ行きました。片道7時間かけて行きました。日本の、京都府の大自然に涙したのを今でも覚えています。岸田さんの言葉をみて、とても悲しくなりました。。日本が、京都が、安全で平和な場でありますように願うばかりです」
京丹後市の航空自衛隊経ケ岬分屯基地には13年2月、発射されたミサイルを監視する装置「Xバンドレーダー(TPY-2レーダー)」を配備し、近畿で唯一の在日米軍基地を建設する計画が浮上した。
地域住民らは「近畿唯一の米軍拠点となり、近畿圏に危険が増す」「レーダーが強力な電磁波を発するため、生態系への影響が心配」「米兵の配属で治安が心配」などの理由で反対の声を上げている。署名サイト「Change.org」でも反対署名が募られ、9月11日時点で1200人を超える署名が集まっているが、京丹後市は配備受け入れの方向へ突き進んでいる。
8月に京都府の山田啓二知事と京丹後市の中山泰市長がレーダー配備受け入れの方向で一致し、9月10日には山田府知事と中山市長が小野寺五典防衛相と会談、地域の安全確保などを要請。府知事は9月17日開会の定例府議会で正式に受け入れ表明する見通しだ。
岸田さんには9万人を超えるフォロワーがいる。これまで当事者以外にはあまり伝わっていなかった情報が、岸田さんのツイートによって広く知られることとなり、多くの人にとって考えるきっかけになったようだ。