2020年夏季五輪の東京開催が決定したことを受けて、2013年9月9日の東京株式市場では、インフラ投資など中長期的な経済効果への期待から建設株や不動産株などで「買い」が優勢となった。
2020年の東京五輪の経済効果は約3兆円。2次的な波及効果を見込めば、5兆円ともいわれる。その恩恵に授かれるのは、どんな企業なのだろう――。
大成、鹿島、清水がそろって年初来高値を更新
9月9日の東京株式市場で値を上げたのは、建設株や不動産株。大手ゼネコンでは、大成建設、鹿島建設、清水建設がそろって年初来高値を更新した。
なにしろ56年ぶりの東京五輪だ。聖火台のある、現在の国立競技場は総工費約1000億円をかけ、2014年7月から19年3月までの工事期間で建て替えを予定している。
まだ事業者は決定していないが、おそらくは大成建設や鹿島建設、清水建設、大林組、竹中工務店(未上場)などのいずれかが受注するとみられる。
また、晴海に建設予定の選手村は920億円の事業規模。五輪閉幕後の活用を含めて、大手ゼネコンや、三井不動産や三菱地所、住友不動産などの大手不動産が注目している。
どの銘柄も直接的な経済効果が見込めるし、地価上昇などの副次的な効果も期待できる。
建設関連株はまだある。五輪会場がウォーターフロントにあたることから関連工事の受注に期待がかかる、海上土木に強みをもつ五洋建設や地盤改良など特殊土木のライト工業、交通インフラの整備ではコンクリート橋梁のピーエス三菱や橋梁大手の横河ブリッジホールディングス、道路舗装大手のNIPPO、セメント大手の太平洋セメントなどがそれだ。
一方、アシックス、ミズノ、デサント、ゼビオなどのスポーツ関連株も上昇。また、2020年の東京五輪をにらみ、選手育成が盛んになるとみられることから、スポーツクラブをもつコナミなどの銘柄も上がった。
海外旅行者の増加を想定した観光・ホテル、交通関連の銘柄も買われ、藤田観光や日本空港ビルデング、オリエンタルランドなどが上昇。多くの旅客が期待できるJR東日本やJR東海、東京急行電鉄など、五輪開催の恩恵が見込めそうな銘柄は総じて高かった。
「一見五輪と関係なさそうな企業でも、恩恵があるかも」
そうした中で、2013年9月9日付のスポーツニッポンは、世界最薄の「0.022ミリ」のコンドームを製造している相模ゴム工業が、2020年の東京五輪でのコンドームの配布に意欲をみせている、と報じた。同社の担当者が「五輪までに、なんとしても0.01ミリ台を実現させる」と、意気込んでいるという。
五輪でコンドームが初めて配布されたのは1988年のソウル大会。2012年のロンドン五輪では参加者1万500人に対し史上最多15万個が配布されたが、わずか5日で品薄になり話題を呼んだ。
そんなこともあって、週刊朝日(2013年9月13日号)も、コンドームメーカー大手のオカモトに注目している。相模ゴムと同様、オカモトも過去に長野・冬季五輪のときに配布された経緯がある。
いずれも東京五輪での需要を期待されてのことだ。
さらには、高級ホテルのベッドシーツのクリーニングなどを請け負っている白洋舎や、スポーツの放映権やマーチャンダイジング権などを独占販売できる権利を多数保有している広告大手の電通なども「五輪特需」を手にしそう。
とはいえ、ある個人投資家は、「2020年の東京五輪は、基本的にはアベノミクス政策の延長線のこととみています。3本の矢の3本目になかなか火が点かない中で、それを後押しする。なので一見五輪と関係なさそうな企業でも、案外恩恵があるのではないでしょうか」という。