2020年夏季五輪の開催地に東京が決まった13年9月8日からツイッター上に「子供を生んで五輪を一緒に見たい」「五輪までに結婚して子供を生みたい」といった書き込みが大量に現れ、ネットユーザーを驚かせている。
日本では夏冬合わせ過去に3回オリンピックが開催されているが、開催年に出生数や出生率が上がるかというと、統計を見る限りではそうとは言えないようだ。それではなぜこうしたツイートが大量に出ることになったのだろうか。
「子どもがいて一緒にオリンピック見に行きたいね」
国際オリンピック委員会(IOC)総会で20年夏季五輪の開催都市は東京に決まり、東京での五輪は56年ぶり、冬季の札幌、長野を含めると4回目だ。ネット上に歓喜の書き込みが溢れるなか、なぜか「結婚」と「出産」、「子供」といったキーワードのツイートが大量に出現した。それはこんな具合だ。
「2020年には結婚して、子どもがいて一緒にオリンピック見に行きたいね」
「東京オリンピック時に29歳か。嫁おって子供おって子供と一緒に祭りやるのが昔からの夢やわ!」
「東京オリンピックみてー!! あわよくば自分の子供と一緒に見てー!!」
「東京オリンピックのときまでには結婚して子供もいて、なんならそのとき金メダルとった選手にちなんだ名前を子供につけたりできるようにしたい」
「オリンピック7年後かぁ。26才だよ私(笑)結婚してるかな!子どもいるかな!ちゃんと保育士さんなれたかな!」
大規模で楽しみなイベントがあると心が高揚するというのはよくあるが、果たしてオリンピックの開催が決まると結婚や出産が増えるのだろうか。日本では過去3回オリンピックが開催されているが、厚生労働省の「人口動態統計」で調べてみると、東京オリンピックの1964年は開催が決まった7年前の57年と比較し出生率は0・01ポイントアップ。ただしオリンピック翌年の出生率は64年より0・9ポイントアップ。72年の札幌は7年前の65年と出生率は同じ。98年の長野冬季オリンピックは7年前の91年から出生率、出生数とも下がり続けた。
婚姻数の推移を見ても、オリンピックがあるから急に上昇したということはないようだ。統計を見る限りでは、オリンピック開催と結婚、出産の関係はよくわからない。
若年層(18~34歳)の結婚したい意識が年々強くなっている
ニッセイ基礎研究所生活研究部准主任研究員の久我尚子さんによると、単純に五輪開催決定で盛り上がり結婚したくなった、子を産んで五輪を見せたくなった、ということではなく、ここ10年来若年層(18~34歳)の結婚したい意識が年々強くなっていて、五輪開催決定をきっかけにそうした感情がツイッターなどに噴出したのだろう、と分析している。
国の統計によれば「いずれ結婚するつもり」と答えている若年層は男女共に90%近くいる。大きく変わったのは相手に対する意識で、2000年ごろは理想の相手が現れなければ結婚しないとしていたのに対し、今では理想の相手でなかったにしても「ある程度の年齢までには結婚するつもり」と答える人が男女とも60%近くになっている。
どうして結婚に前向きになったかというと、核家族化が進んだ世代のため家庭というものに憧れを持っていること、そして東日本大地震で家族の絆と言うものを実感したからだという。そしてそれだけではない。
「安倍政権になって基本給は上がらなくても残業代や賞与が増え、年収で見れば上昇していますし、オリンピックが来るということで日本経済が活性化し雇用も増えるだろうと予想できるわけです。そういった余裕が生まれるイメージも結婚、そして出産について向き合える要素になっているのだと思います」
結婚したい若年層が増えていることでうまくすると少子化に歯止めがかかる可能性もあるという。