子どもたちに「夢ハウス」【岩手・大槌町から】(11)

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で
子どもたちは馬に触れたり乗ったりして楽しんだ=2013年8月17日、大槌町の旧赤浜小校庭
子どもたちは馬に触れたり乗ったりして楽しんだ
=2013年8月17日、大槌町の旧赤浜小校庭

   東日本大震災で壊滅的な打撃を受けた岩手県大槌町には、子どもの遊び場がない。公園は津波で浸水し、広場には仮設住宅が立ち並ぶ。被災した4小学校が統合されて2013年4月にスタートした新生・大槌小学校は、仮設校舎での授業を強いられている。子どもたちの通学路は、復興事業の本格化に伴い、ダンプカーが砂塵をあげて行き交っている。

   一方で、こんなデータがある。岩手県の調べによると、2013年7月末現在で、震災で両親を失った震災孤児は94人、父母いずれかを失った震災遺児は488人。大槌町内の震災孤児、遺児は81人を数える。


   子どもたちは、登下校で道草を食ったり、仲間と遊んだりする中で精神的に成長し、社会性を身に着ける。震災で家族を失ったり、遊び場がなくなったりしてストレスを抱えている子どもたちには、なおさらのこと遊び場が必要だ。大槌町の子どもたちの現状に危機感を持った山口市の社会福祉法人「夢のみずうみ村」が、遊び場づくりに乗り出した。大槌町の旧安渡(あんど)小学校近くの木造2階建ての空き家を借り、2013年4月、無償で、「子ども夢ハウスおおつち」を開設した。


   遊び場づくりは、「夢のみずうみ村」の理事長の藤原茂さん(64)が、北上市の復元納棺師 笹原留似子さん(41)と出会い、意気投合したのがきっかけだった。笹原さんは、震災直後、ボランティアで、遺体を復元し納棺する活動に奔走した。その際、家族を失った子どもたちに心を痛め、子どもたちの居場所が必要だと感じていた。被災地に入って活動をしていた藤原さんが、そのことを知り、全面的支援に乗り出した。


   「夢ハウス」には、「夢のみずうみ村」が派遣した作業療法士の吉山周作さん(27)が常駐している。「夢ハウス」には、近くの仮設団地に入っている小学生の子どもたちが集まり、ゲームをしたり、宿題をしたり、料理を作ったりしている。この夏、8月14日から3日間あった安渡地区の盆踊り大会では、子どもたちが、かき氷や綿あめの屋台をつくってお年寄りと交流した。

「夢ハウス」に関わっている、左から藤原茂さん、笹原留似子さん、吉山周作さん
「夢ハウス」に関わっている、左から藤原茂さん、笹原留似子さん、吉山周作さん

   8月17、18日には、「夢ハウス」が、旧赤浜小校庭で、ホースセラピーを催した。子どもたちは、調教された馬に触れたり、乗ったりして楽しんだ。協力したNPO法人インフォメーションセンター(本部・沖縄県)の代表理事 寄田勝彦さん(46)は「馬と触れ合うことで、子どもたちの心が癒される。乗馬することで自信がつく」と話した。

   「夢ハウスに」に通う子どもたちの中には、震災体験からか、行動が落ち着かなかったり、会話がぎくしゃくしたりする子どもたちがいる。藤原さんはこう話している。「震災で精神的に傷ついた子どもたちが少なくない。夢ハウスで、伸び伸び過ごしてほしい。子どもの心の復興なくして、真の復興はあり得ません」(大槌町総合政策課・但木汎)


連載【岩手・大槌町から】
(10) << (11)

姉妹サイト