2020年五輪開催都市に東京が選ばれたが、IOC委員からは汚染水による影響について質問されるなど福島原発事故への心配の声が目立った。これに対し、安倍首相が「新聞のヘッドラインではなく、事実を見ていただきたい」と不満を口にする一幕もあり、メディアへの不信が際立っている。
安倍首相は猪瀬直樹東京都知事やフェンシングの太田雄貴選手らとともにプレゼンに出席。約5分間のスピーチをすべて英語で語った。
連日の新聞報道では事態の深刻さを思わせる表現が並び
その中で安倍首相は東京で開催するメリットとして、世界で最も安全な都市であることをアピールし、福島の原発事故については「福島の状況はコントロールされている。東京にダメージが与えられることはない」と訴えた。
安倍首相はIOC委員から「福島の原発事故について毎日のようにメディアが報じているが安全は確保されているのか」と質問されると、日本語で回答すると断り、「新聞のヘッドラインではなく、事実を見ていただきたい」と反論。福島第一原発での汚染水漏れをめぐるマスコミ報道への不満と見られる発言をした。
具体的にどのメディアの、どのヘッドラインを非難しているのかは明らかにしていない。が、連日の新聞報道では「打つ手なし」、「出口遠く」など事態の深刻さを思わせる表現が並んでいた。
首相はこれまでもマスコミへの不満を示す
一方、海外メディアは安倍首相のスピーチを概ね好意的に捉え、東京開催決定の「決め手」になったと報じた。なかでもロイター通信は、安倍首相のカリスマ的な訴えがイスタンブールを破ったと報じた。
これまでも安倍首相は自身のフェイスブックなどでマスコミへの不満を示している。2012年の衆院選前にはTBSで自身の映像が無関係なわいせつ事件のニュースに映るハプニングに「これから1ヶ月こうしたマスコミ報道との戦いです」、毎日新聞の批判記事に対して「トホホな記事」「印象操作」とコキ下ろすなどしていた。
ただ、メキシコ大統領との会談がNHKのニュースで報じられなかったと、勘違いして書き込んでからはマスコミへの批判は抑制していた。