新聞の勧誘・契約をめぐるトラブルがあまりにも多いとして、日本新聞協会など関係団体が2013年8月22日までに、国民生活センターから改善要望を突きつけられた。
全国での相談件数は年間約1万件、訪問販売関連では最多に上る大きな問題だが、あいにく当の新聞側でこれを報道したのは全国紙では日経、産経の2紙のみ、その両紙にしても扱いはごく小さい。
豪華な景品をエサに「12年契約」を結ばせて…
新聞の強引な勧誘・契約はこれまでにもたびたび問題化しており、新聞各社もそのたび常に「改善」「正常化」を唱えてきた。「契約してくれるなら○○○を上げますから……」といった景品をエサにする勧誘についても、法律などで上限額がおよそ2000円弱と定められ、違反した場合には、罰金や謝罪、また違反事実の広告を行うこととなっている。
しかし国民生活センターによれば、現在も新聞の半分をめぐるトラブル相談は多数寄せられているという。その件数は2012年度で9886件に上り、業界の「努力」にも関わらず横ばいが続く。一概には比べられないが、12年の「振り込め詐欺」の認知件数は6000件余りだ。
では、実際にはどのようなトラブルが起きているのか。たとえば近畿地方に住む60歳代女性の場合だ。女性は現在A新聞を購読しており、間もなく契約期間が終了する。その契約終了後には、別のB新聞を4年間講読する約束をしている。さらに女性はB新聞のあとにはC新聞を1年間、そしてC新聞の後には再びA新聞を7年間取るという契約まで結んでしまった。
「今契約すれば液晶テレビがもらえる。もらえるものはもらっとき」
という販売員の言葉に乗せられた形だ。これはいわゆる「起こし」「先付け」と呼ばれる契約だが、それにしても合計すれば12年とはさすがに長い。その後、女性は年齢のため目が悪くなったことなどからこの契約を取り消そうとしたが、販売店は、
「解約するなら(テレビ代の)5万円を現金で払うか、同じ機種のテレビを買って返してほしい」
と迫ってきた。「どうしたらよいか」――と女性はセンターに駆け込んだ。
「いつでも解約できる」と言われたのに…
こうした場合、景品の返還を完全に拒むことは簡単ではない。国民生活センターは、高齢者の場合、病気など止むを得ない理由で新聞の購読が続けられなくなる可能性があることから、長期の契約や「先付け」契約は避けるよう求める一方、新聞側にはこうした止むを得ないケースでの解約について整理・周知を徹底するよう求めている。
契約に当たり、勧誘側が不正確な説明を行う場合もある。中国地方の高齢男性は、「いつでも解約できる」と言われD新聞を契約したが、転居に伴い解約しようとすると、
「あと2年の契約が残っている。2年分の新聞購読料約10万円を支払わなければ、解約できない」
と凄まれたという。また九州北部の80歳代女性は、「1か月」との約束で契約期間が白紙のままの購読契約書にサインしたところ、勝手に「3年間」と書き込まれてしまった。さらには、「アンケート用紙だ」といわれて署名したところ、実は契約書だったという事例も報告されている。
これらの実例を見ても、目立つのは契約者が高齢の場合だ。国民生活センターの調べでも、相談を持ち込む契約者の平均年齢は61.7歳と、2003年の41.7歳から20歳も上昇した。
日本新聞協会も2012年のレポートの中で「70歳以上の読者の動向」に一節を割くなど、「若者の新聞離れ」と読者の「高齢化」は着実に進行する。今回の国民生活センターのデータからは、新聞業会が高齢者への売り込みを強化し、その一部がトラブルに発展している実態がうかがえる。
なお新聞協会では今回の要望に対し、「19日に会合を開き、要望書を元に検討を行う」としている。