中国の若者は日本人とほとんど変わらない
――原田さんは各地を回り、中国の若者事情について調べていますね。近著でも彼ら「八〇後」「九〇後」世代について紹介していますが、原田さんから見た中国の若者は。
原田 北京、上海、広州といった大都市部の、そこそこ裕福な層では、日本の若者と中国の若者にはそんなに違いがなくなってきています。ですから就職難など悩みも近い。ソーシャルメディアでもツイッターに相当する「微博(ウェイボー)」から、LINE的な「微信(ウェイシン)」が主流になりつつありますし、「草食系男子」に近い「小男人(シャオナンレン)」という言葉が流行語になるなど、いろんな現象が似てきています。
違いに注目するより、共通点に注目した方がいいくらいですね。もっともグローバル化で、先進国がみんな似てきている、という面もあるんですが。
――よりよい日中関係のため、こうした両国の「若者」世代はどうあるべきなのでしょう。
原田 まずは日本の若者へ。私は元々日本の若者研究が本業なんですが、私の周りにいる若者たちは、中国について「行ったことがないし、中国の友達もいないので正直わからないです」と言うんです。彼らは同世代の中でも優秀で、そうした層ですら中国に関心がないと平然と言ってのけてしまう。
2050年には世界のGDPの半分をアジアが占めます。好き嫌いを問わず、中国を含むアジアをとにかく見ていかなくてはいけない。見た結果嫌いになるのは仕方がないですが、いまだに興味がないというのがマジョリティというのは、ちょっと恥ずかしいと思いますね。
逆に中国の若者にはもう一段階前の話というか、「まずは海外のことをちゃんと知りましょう」。海外に出て、日本に接すれば、日本が嫌いになるということはまずない。こんな国は他にありませんから。中国が国際化してくれればしてくれるほど、日本には得になるんです。
――最後に、日中関係の今後については。
原田 中国はやはり他の国とは同じようにはいかない。今後どんなに日本が努力しても、反日暴動は起こってしまうかもしれません。これを機会にそういうものだという事実を冷静に受け止め、いろんなリスクを考えた上で賢く、戦略的に付き合っていくことが大切では。
また今までは中国で反日騒動が起こると、日本が一方的に損をするだけでした。しかし中国も経済的に成熟し、むちゃくちゃをすれば中国にも損になる。初めて対等に物が言い合える、お互いが対等に必要とし合うステージに入ってきた。これからは、そんな関係を日中が作っていければいいな、と思います。
〈原田曜平氏 プロフィール〉
はらだ ようへい 1977年生まれ。慶応大学商学部卒業後、株式会社博報堂入社。現在、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。多摩大学非常勤講師。日本、中国を始めアジア各国の若者たちの研究を続け、その知見を生かした商品開発やマーケティングなどを手がけている。共著に『10代のぜんぶ』(ポプラ社)、『情報病―なぜ若者は欲望を喪失したのか?』(角川oneテーマ21)、単著に『近頃の若者はなぜダメなのか―携帯世代と「新村社会」』(光文社新書)ほか。メディア出演も多数。最新の著作は、加藤嘉一さんとの共著『これからの中国の話をしよう』(講談社)。