2012年夏の「尖閣暴動」以来、日中関係には改善の兆しが見えてこない。企業の「中国熱」もすっかり冷え込み、今や「中国撤退セミナー」に長蛇の列ができているとの報道さえある。
一方で、日本にとって中国は隣国であり、「超巨大市場」だ。「断交」することは現実的ではない。日本人はこの国に対し、どう向き合っていくべきなのか。『これからの中国の話をしよう』(加藤嘉一さんとの共著、講談社)を2013年8月出した、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーの原田曜平さんに聞いた。
「反日は50年消えない」もあながち間違いじゃない
原田さんは豊富なフィールドワークを通じて日本と中国を始めアジアの「若者」たちを研究してマーケティングに携わっており、中国市場の「現場」をよく知る人物だ。現在の、そしてこれからの日中関係をどう見るのか。
――中国国内の「反日」ムードについて日本国内では、非常に深刻視する論者もいれば、「いずれ鎮静化する」と楽観視する声もあり、意見がわかれています。
原田 中国ではこれまでも小泉政権以降、毎年のように「反日デモ」が起こってきました。しかし2012年のものは、過去のデモとは比べ物にならない。日本では反日ムードが落ち着いてきたとの見方もありますが、残念ながら尖閣問題以降、中国では完全に、日本人そして日本への決定的に悪いイメージが根付いてしまったように思います。
――中国には地域や社会階層などによる考え方の差もあるともいいますが。
原田 確かに中国は一枚岩ではありません。たとえば経済的に進んだ南の人の方が「親日的」な傾向はありますし、都市と地方、社会階層によっても違いはあります。それでも今回はそれを越え、中国人全体にネガティブな見方が定着してしまった。今や「日本と中国とが戦争したら、どっちが勝つか」なんて話が日常的にされているくらいです。
もちろん、実際に日本人と接点がある、日本に来たことがあるような人は当然ある程度正しい日本観を持っています。ただ13億人いる中で、海外旅行に行けるような人はほんの一握り。どうしても大半の人はメディアの報道や抗日ドラマでしか日本を知りません。
漫画『社長 島耕作』の中で島が「あと50年は中国国民から反日感情は消えないだろう」という趣旨のセリフを話す場面がありますが、あながち間違ってないと思いますよ。本当に、日本人が想像しているよりも状況は凄く深刻です。