「電車男」と「ローゼン麻生」が生んだネトウヨ像
――「オタク」で「愛国」……こうした「ネット右翼」のイメージはどのように形作られたのでしょうか。
古谷 1つは、「電車男」だと思います。2005年にドラマ化、映画化され大ヒットしましたが、この作品に登場するネットユーザーたちは、「アキバ系」「パラサイト(低収入)」「童貞」の主人公を始め、実生活で問題を抱え「はけ口」を求めてネットにのめりこむ人々として描写されました。これが、ネットへの蔑視と、ネットユーザー(2ちゃんねらー)=アキバ系の「電車男」というイメージを広く植えつけた。
もう1つは、麻生太郎さんの存在です。「漫画好き」を公言する麻生さんは2006年から繰り返し秋葉原で演説を行い、2ちゃんねるなどにも言及するようになりました。そうした様子が報じられるうちに、「秋葉原」と「愛国」のイメージが人々の中で結びついていったのでは。実際には、秋葉原の人々は政治的に無色、あるいは表現規制問題などに関してかなり「左」がかったことも言っているぐらいなんですけどね。
こうして「電車男」「麻生太郎」という2つの接着剤で、「秋葉原」「2ちゃんねらー」「保守・愛国」という3者が結びついてしまった。それが「ネット右翼」というレッテルだと思います。
――2005~6年という時期が1つのターニングポイントになったということでしょうか。
古谷 おっしゃる通りだと思います。2006年には小泉内閣も退陣したし、堀江貴文さんの逮捕もこの時期でした。ネットもYouTubeやニコニコ動画が誕生し、「テキスト」から「動画」の世界になっていった。いろんな意味で世の中が動くターニングポイントだったのではないでしょうか。