米国がシリアへの軍事介入に踏み切るかどうか重大な局面を迎えるなか、シリアのワリフ・ハラビ駐日代理大使が2013年9月6日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見し、軍事介入の不当性を主張した。
焦点となっている化学兵器の使用についても「あり得ない」と完全否定。逆に、反政府側が化学兵器を使用したと主張した。
米以外にも「国連安保理決議がない限り行動すべきでない」と求める
シリアへの軍事介入をめぐっては、武力行使を容認する決議案が上院委員会では可決され、下院でも審議が始まった。だが、まだ態度を明らかにしていない議員も多く、議会の承認を得られるか不透明だ。国際社会で理解を得るのはさらに困難で、安倍晋三首相もG20サミットで行われたオバマ大統領との首脳会談で「重い決意と受け止めている」と述べるにとどまり、明確な支持を打ち出すには至っていない。
軍事介入への理解が得られない大きな理由が、その根拠が明確ではないことだ。ハラビ大使の会見でも、主張の多くがこの点に費やされた。
ハラビ大使の説明によると、米国が主張する軍事介入は、国家が自国民を保護する能力や意思がなくなったときは、国際社会がその人々を保護すべきだという「保護する責任」と呼ばれる比較的新しい考え方を根拠にしている。だが、この「保護する責任」が適用されるのは「戦争犯罪」「民族浄化」「人道に対する罪」「大量虐殺」(ジェノサイド)の4つに限られ、シリアの内戦の場合はこれにはあたらないと主張した。
また、米国などがとなえる「保護する責任」「先制行動」「人間の安全保障」(ヒューマンセキュリティ)といった考え方は、国連憲章がうたっている(1)主権を尊重(2)領土の保全(3)内政への不干渉といった基本原則を覆そうとしている、とも批判した。
さらに、米国以外に対しても、(1)8月下旬に国連の査察団が行った現地調査の結果が出ていない(2)国連安保理決議がない限り行動を起こすべきでばない、と訴えた。