携帯電話やパソコンに没頭しすぎて、生活や健康にも影響を与える「インターネット依存症」が深刻な問題になっている。
政府では、若者を対象に、ネット環境から一定時間離れさせる「ネット断食」をさせ、依存からの脱却を図る調査研究事業を始める方針を打ち出した。
精神科医や臨床心理士がカウンセリング
厚生労働省の研究班が2013年8月1日に発表した調査によると、インターネット依存症の疑いの強い中高生は、全国で推計51万8000人にものぼる。全国の中学・高校から264校を無作為に選んだうちの、約7割にあたる約10万人が回答した。
ネット依存症になると、ネットの利用が減るとイライラするほか、昼夜を問わずネットに熱中するあまり睡眠障害を起こしたり、生活リズムが崩れて栄養障害になったりする。
最近では、若者にスマートフォンの普及が進んだこともあり、「PCやゲーム機がないからうちは安心というご家庭でも、実は子供が学校でも布団の中でも一晩中スマートフォンを手放せず、ゲームやネットにのめりこんでしまうケースがある」と、ネット依存治療研究部門を持つ久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)のサイトに掲載されている。
こうした若者の「ネット依存」対策として文部科学省が打ち出したのが、ネットのない環境で約1週間の合宿を実施する調査研究事業だ。2014年度予算概算要求に関係経費を盛り込んだ。
ネット依存傾向にある学生を集め、ネットから離れた規則正しい集団生活を約1週間体験させることを想定。日本より早くネット依存が問題になった韓国で実施している11泊12日の「レスキュースクール」を参考にした。
国立青少年自然の家などの施設で、共同生活をしたり野外活動で自然と触れ合ったりして、「社会的な能力を身につけることで、ネットの使用時間を自ら調整する力を育む」という。合宿中には精神科医や臨床心理士のカウンセリングや、専門家による講義も行ってネット依存からの脱却を目指す。プログラムが終了してからも、定期的に臨床心理士や心理系大学の学生ボランティアによるメンターが家庭訪問してフォローアップする。