「活断層ではない」――。関西電力大飯原子力発電所(福井県)の敷地内にある「F‐6破砕帯」(断層)について検討を重ねてきた原子力規制委員会の調査チームが2013年9月2日に開かれた評価会合で、そう判定した。
調査を開始してから、まもなく1年。これまで3度の現地調査と5回の評価会合をもったが、判断が先送りされていた。
活断層の可能性を否定するのは初めて
関電の大飯原発は、国内で唯一運転中の原発。問題の断層「F‐6破砕帯」は、大飯原発3、4号機用の重要施設「非常用取水路」の真下を横切る。活断層ならば2基の運転は認められない。
2013年9月2日の評価会合で、関電は「F‐6破砕帯」の断面や周辺で採取した地質試料から、断層の活動時期が非常に古く、将来も動く可能性はないことがわかったと説明。調査チームはこれを妥当と判断した。活断層の可能性を否定するのは初めて。
原子力規制委員会は、「一定の方向性が出たと思っています」と話している。
とはいえ、活断層か否か――。当初、調査チームの見解は「活断層」に傾いていたと思われる。
2012年11月の現地調査では、新たに確認された地層のずれが活断層か地滑りかで見解が分かれた。調査チームの一人、変動地質学が専門の渡辺紀生・東洋大教授が「活断層であることに間違いない」と断言。そのことで関電が追加調査を求めた、12月28日の調査でも、原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理が「活断層はないという関電の説明には納得していない」と、活断層の疑いを排除しなかった。
関電は「断層は地滑り」によるものと主張。調査チームも溝に入って地層の歪みを見たり、土を採取したりしたが、関電と同じ見解を示したのは5人のうち、岡田篤正・京都大名誉教授だけ。ほかの4人は「説明しきれない部分がある」(広内大助・信州大准教授)などと話し、判断を持ち越していた。
活断層「肯定派」と「否定派」が激しく対立
5回の評価会合を重ねた結果、中立的な立場をとる原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理に、「活断層である」と主張する渡辺満久・東洋大教授と、「活断層を否定するに至っていない」とする広内大助・信州大准教授。これに対して、「地滑りの可能性が大きい」という岡田篤正・京都大名誉教授と、「活断層でない可能性が高い」とする産業技術総合研究所の重松紀生・主任研究員の、ほぼ真っ二つに割れていた。
なかでも、活断層「肯定派」の渡辺氏と「否定派」の岡田氏は激しく対立。2013年8月19日の第5回会合では、岡田氏が「土地勘もない人が知識もなく判断するのはおかしい」と、渡辺氏を批判。渡辺氏は「学会で議論したい」と応じ、岡田氏は「望むところだ」と、やり返す一幕もあったそうだ。
打開策だったのだろうか、9月3日付の日本経済新聞によると岡田氏は、専門に偏りがあるとして「別の専門家も入れてほしい」と専門家チームの体制拡充を原子力規制委員会要望していた、と伝えている。
「活断層ではない」とする判断の決め手となったのは、専門家チームでただ一人の地質学者である重松氏の発言とされる。鉱物の分析結果などから断層が40万年前より大幅に古いことを認定し「(関電の言い分は)おおむね妥当」と表明した。座長役の島崎委員長代理が、多少強引とも取れる進行をみせたこともある。
ただ、正式な評価書をまとめるには調査チーム以外の専門家の審議を経る必要があり、さらに数回の会合を開くことになるが、専門家が寄って集って調べても「活断層」の判断は難しいようだ。