米アップルの「アイフォーン(iPhone)」の新モデルが間もなく発表されるとのうわさが飛び交うなか、国内でiPhoneを販売するKDDIの田中孝司社長が高速通信サービス「LTE」の改善で自信をのぞかせた。
新iPhoneでは、KDDI がLTEのカバー面積でソフトバンクモバイル(SBM)を上回る可能性も出てきた。2013年前半に発生した通信障害や、「パケ詰まり」の負のイメージを払しょくできるか。
800MHz「プラチナバンド」のLTEにiPhone対応?
田中社長が2013年9月2日の会見で強調したのが、「プラチナバンド」と呼ばれる800メガヘルツ(MHz)の周波数帯でのLTEネットワーク強化だ。プラチナバンドは障害物を回り込んで電波が届きやすいといわれる。2014年3月までには、実人口カバー率99%達成をもくろむ。
KDDIは「au」ブランドで、iPhoneを2011年に販売開始。現行モデルのiPhone5では、2.1ギガヘルツ(GHz)帯でLTEに対応している。もし新型機が800MHz帯のLTEに対応するようになれば、「つながりやすさ」の点でライバルのSBMに対抗する大きな武器になるだろう。この点について田中社長は明言を避けたが、800MHz帯の拡充によって「KDDIのネットワークが断トツになるのではないか」と話したという。
ツイッターをみると「頼むで、田中社長」と期待の声が上がる一方で、「その前にちゃんとiPhone5でLTEつながるようにしてください」「障害がしばらく起きないことを確認できてからそんなこと言えば」と突き放す向きもある。こういった書き込みは、KDDIが起こした通信障害や、「パケ詰まり」に関する疑惑で、利用者が持つ悪い印象を消し去れていないことを示している。
2013年4~5月に、相次いで通信障害が発生した。特に5月29日は、LTE対応の端末利用者約56万人に影響が及んだ。これに先立つ5月21日には消費者庁から、景品表示法に違反する不当表示があったと措置命令が下された。iPhone5の紹介用ウェブサイトやカタログで、「受信最大75Mbpsの超高速ネットワークを実人口カバー率96%に急速拡大。(2013年3月末予定)」と掲げていた。一読するとiPhone5も含まれるようだが、実際iPhone5で最大速度を得られる地域は14%にとどまっていたのだ。
電波が届いているのにインターネットに接続できないパケ詰まりの問題でも、批判を浴びた。各種調査の結果だけでなくユーザー自身が「auのiPhoneはつながらない」と声を上げたのだ。そこでネットワーク強化と高速通信対応エリアの拡大、LTE基地局制御装置の増設で解決を図るのだが、利用者のひとりはツイッターで「口先より実績で示してもらわないと」と注文をつける。信用を取り戻してライバルを突き離せるかどうか、これからが正念場だ。
「全国満足度調査」ソフトバンクはわずか2県
新型iPhoneは、アップルが9月10日に発売するとの予測が流れている。そうなればKDDIとともにSBMも、国内で発売するのは間違いない。
SBMは特設サイトをつくって「スマホのつながりやすさNo.1へ」とアピールを続けている。「スマホパケット接続率」では最新の8月4日の結果でSBMが97.1%に達し、auやNTTドコモの端末を抑えてトップだと主張する。
ただ気になるデータもある。ネット調査会社「ネオマーケティング」が8月29日に発表した「47都道府県別通信会社のつながりやすさ満足度調査」では全く逆の結果が出たのだ。全国4230人を対象に、利用している携帯電話会社の全般的な満足度を聞いたところ、26県で首位だったのがドコモ、次いで18県のau、最下位のSBMはわずか2県にとどまった。調査では「つながりやすさは2強1弱」と評した。
「ネットにつながりにくい」という質問項目に対しても、そう感じると答えたSBMユーザーが27.1%に上った。ドコモ21.0%、auの23.4%に比べると、ここでも厳しい数字だ。LTE対応端末やiPhoneに限定した調査ではないが、SBM自身が「1番宣言」をしているのにユーザーの印象は正反対というのも奇妙だ。
この調査で高評価を得たドコモは、iPhoneを販売していない。ただ今回の次のモデルから「参戦」といううわさもある。仮に実現すれば、KDDIもSBMも今まで以上に「つながりやすさ」を実証し、通信の安定や品質向上を図らなくてはならないだろう。