政府が開発費の3分の1弱を補助する国家プロジェクト
MRJは「YS11」以来約50年ぶりの国産旅客機開発で、政府が約1500億円の開発費の3分の1弱を補助する国家プロジェクトでもある。米プラット&ホイットニー(P&W)が開発した最新エンジンを採用し、ライバル機より燃費性能を約2割高くしたのがセールスポイント。全日本空輸(ANA)と米航空会社2社から計325機を受注している。しかし、度重なる延期で契約が解除されたり、違約金を請求されたりする可能性もあり、川井社長も「懸念の心配は当然出てくると思う」と否定はしなかった。
小型ジェット機は新興国を中心とする需要の高まりで、今後20年間で5000機以上の需要が見込まれている。三菱航空機は採算ラインの500機に向け、さらなる受注を目指している。だが、世界の小型ジェット機市場はカナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルの寡占状態で、最近はロシアや中国のメーカーも台頭し、激しい販売競争が続いている。業界では「MRJは実機がないだけに営業活動は厳しいだろう」(航空関係者)との懸念も出ている。
一方、MRJの強みである燃費性能の高さについても、エンブラエルは2018年前半投入の次期モデルにP&Wの同タイプのエンジンを搭載する予定だ。三菱航空機は「MRJの方が性能的には上」(川井社長)と強調するが、今回の延期で納入時期の差は1年程度に縮まり、それだけMRJの優位性は低下していただけに、今後の受注活動は厳しくなりそうだ。