無煙たばこでも受動喫煙リスクの指摘 煙が出なくても呼気から有害物質

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   たばこの煙を周りの人が吸引し、健康被害につながる「受動喫煙」の危険性は今日、広く認識されている。では「かぎたばこ」のように、吸っても煙の出ないたばこはどうだろうか。

   健康増進法では、受動喫煙を「室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義している。だがたとえ無煙のたばこでも、喫煙者の呼気に有害物質が含まれるため周囲に悪影響を及ぼすとの指摘がある。

1本の喫煙で呼気に有害物質が8時間排出

煙が出なくても周囲に害を及ぼすのか
煙が出なくても周囲に害を及ぼすのか

   日本学術会議が2013年8月30日に発表した「無煙タバコ製品(スヌースを含む)による健康被害を阻止するための緊急提言」は、煙の出ないたばこは紙巻きたばこに比べて健康被害が少ない、また受動喫煙の危険性がないといった「より安全な製品」と誤認されるのが問題だとしている。

   海外と比べて国内では、これまで無煙たばこの需要は限られていた。2010年、日本たばこ産業(JT)がタバコの葉を詰めたカートリッジをパイプに付けて吸う製品を発売。JTの発表資料には、煙が出ないことから「周囲の方に迷惑をかけることなく、また様々な場所で楽しんでいただける」と書かれている。最初は東京限定での発売だったが、一時は品薄になるほど人気を呼んだ。当時の報道を見ると、ロイター通信の見出しは「受動喫煙防止でニーズの高まり見込む」(2010年3月17日付)となっており、読売新聞も3月18日付の記事中「受動喫煙対策に」との表現があった。法律上はたばこの煙が受動喫煙の原因となっている半面、無煙たばこならリスクを防げるのではと解釈したのだろうか。

   さらにJTは2013年8月1日、スウェーデンの伝統的なかぎたばこ「SNUS(スヌース)」の商品を発売した。スヌースは小袋の中に粉末状にした葉タバコを入れ、ほおと歯茎の間にはさんで体内にニコチンを吸収する。やはり煙は出ない。

   ただ「煙ゼロ」なら受動喫煙の心配がないか、については異論がある。JTがパイプ式の無煙たばこを発売した2010年、産経新聞は同年7月5日付記事で、日本禁煙学会理事長の作田学医師の「呼気に含まれる有害物質によって知らず知らずのうちに受動喫煙にさらされる」とのコメントを紹介している。九州がんセンターの「禁煙キャンペーン」の資料には、「喫煙者の呼気中には一酸化炭素など数多くの有害物質が含まれており、1本の喫煙で8時間以上も呼気中に排出されています」との説明がある。神戸市が出している「職場におけるたばこ対策ハンドブック」にも、「1本吸うと、息からニコチンやタールを含んだ呼出煙が数時間出続けると言われています」と書かれていた。紙巻きたばこと同じ成分を含んでいれば、無煙たばこでも同様の結果になるはずだ。

JT「無煙たばこと健康の影響、今後研究が必要」

   日本学術会議では提言書で、「受動喫煙」や「煙」の再定義を促している。煙の有無という議論にとどまらず、無煙たばこそのものや使用者の呼気から発生する有害物質も含めて受動喫煙を考えるべきというわけだ。

   国際的には、日本も批准している「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」第8条で「たばこの煙にさらされることからの保護」が明文化され、国内でも健康増進法に基づき受動喫煙の防止対策が進められている。だが無煙たばこは実際に煙が出ないことから「別物」とみなされ、国内では規制の枠外と扱われることもあるようだ。同会議では、無煙タバコは使用者だけでなく周囲にいる人も、一般的な紙巻きたばこに匹敵する健康被害を与えると訴えている。

   日本では「煙対策」として新たに発売されたことから、じわじわと増えていくのではないかとの懸念もあるようだ。

   JTのIR広報部はJ-CASTニュースの電話取材に対して、「日本学術会議の提言内容については存じています」と話したうえで、「さまざまな意見がありますが、無煙たばこと健康の影響については明確になっておらず、今後研究が必要と考えています」とコメントした。

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