2020年夏季五輪の開催地決定まで、いよいよ1週間を切った。開催地には東京以外にスペインのマドリード、トルコのイスタンブールの計3都市が立候補しており、「東京優勢」との声もある。
だが、ここにきて、東京電力福島第1原発の事故が招致活動に影響するとの見方が出ている。特に、高濃度汚染水の問題に関する国会審議が先送りになったことが、韓国メディアの不興を買っているようだ。
開催地は13年9月8日(日本時間)にアルゼンチンのブエノスアイレスに行われる国際オリンピック委員会(IOC)総会の投票で決まる。招致活動も大詰めだが、福島第1原発では汚染水問題の解決への道は遠く、その様子を連日海外のメディアも伝える事態になっている。
IOC総会前に審議紛糾するのを嫌った?
東京電力は8月31日、汚染水タンクを調査中に4か所で高い放射線が検出されたと発表。測定された線量は最大で毎時1800ミリシーベルト(1.8シーベルト)で、人が4時間程度浴びると死亡するほどの強さだ。
また、朝日新聞は8月30日、衆院経済産業委員会での汚染水問題をめぐる閉会中審査が9月中旬以降に先送りになったことを伝えている。閉会中審査は、国会閉会中に重要案件を審議する必要がある場合、国会の判断で開くことができる。経産省が打ち出す対策を踏まえてから審議日程を再調整することになった、というのがその理由だが、朝日新聞の記事では、
「9月7日の国際オリンピック委員会(IOC)総会前に、委員会審議が紛糾すれば、2020年の東京五輪招致に影響しかねないとの判断も働いた」
「安倍政権はIOC総会前に予備費投入を含めた具体策を発表し、五輪招致への影響を最小限に抑えたい考えだ。閉会中審査の先送りは、政権の方針を国会が追認した形だが、汚染水事故よりも五輪招致を優先した、との批判を招く可能性がある」
とも指摘している。
韓国メディアが朝日記事を引用
韓国メディアはこの朝日新聞の記事を引用する形で、
「日本はオリンピック開催地選定に不利に作用する可能性がある恥部を最大限に隠す戦略を取っている」(東亜日報)
と日本側の対応を批判。通信社「ニュース1」は、「隠蔽・縮小疑惑」という見出しで一連の動きを伝えた。
聯合ニュースは審議先送りの事実を伝える一方、ブックメーカーでの倍率などを根拠に、
「現在の状況は、東京が有利だという見方が多い」
とも指摘している。
新華社通信「高まる核の危機が五輪招致に暗い影」
菅義偉官房長官は9月2日朝の会見で、審議が先送りになる見通しになったことについて、
「国会の動きに任せるというのが政府の基本的な姿勢」
「国会で決めていただければ、そこは積極的に政府としては対応したい」
と述べるにとどまった。
今回問題になった審議の先送り以外にも、汚染水問題が五輪招致に与える影響について指摘する国外の報道は多く、8月27日には、中国国営の新華社通信が、
「高まる核の危機が2020年東京五輪招致に暗い影落とす」
と題した英語の論説記事を配信。ロイター通信も9月2日、日本政府が事故対応を「東電任せにしない」方針を鮮明にしていることを伝える記事の中で、
「日本の政府高官は、(汚染水問題に対して)国際的な関心が集まり、五輪招致活動を脅かすことになるのではないかと恐れている」
と指摘している。