文科省は今回の「見解」に頭を抱える
学術会議は、4000億円超と見込まれる日本の財政的負担が、他の学術分野の資金調達に悪影響を及ぼす懸念があると判断した。また、建設に必要な1000人規模の加速器研究者の参加が保証されていないことへの懸念もある。この分野の日本の研究者は300人程度とされ、多くを海外から呼ぶ必要があるからだ。検討委員会の家泰弘委員長(東大物性研究所教授)は2013年8月6日の会合後、「国民の理解を得るため、今後専門家以外も入れ、数年かけて調査研究し、再度、誘致の是非を検討すべきだ」と述べた。
文科省は、「学術会議のお墨付きを得て正式に誘致を決める予定だった」だけに、今回の決定に頭を抱える。というのも、ILCは国際宇宙ステーション、国際熱核融合実験炉(ITER)などと並ぶ巨大プロジェクトの一つで、「日本が初めて国際的な共同研究プロジェクトを率いる好機」というのが文科省としての位置づけ。日本の素粒子物理学は、多くのノーベル物理学賞受賞者を輩出するなど世界でもトップレベルとされ、ILCを誘致すれば、次代を担う若手科学者の育成にも大きな効果が期待できることも誘致の大きな狙いだった。