大阪府泉南市の男性職員(59)が勤務時間中にPCを不適切に利用していたとして、減給処分を受けた。公務員や会社員がPCの不適切な利用で処分される場合、アダルトサイトの閲覧が原因になることが多いが、今回のケースはかなり傾向が異なっている。
クローズアップされているのは、ウィンドウズのPCに標準でインストールされているトランプゲーム「スパイダソリティア」。ゲームに興じていた時間も尋常ではなく、1年の労働時間の1割以上にのぼるとみられている。市はソリティアで遊んでいた時間の給与についても返還を求めているが、そんなに暇な職場だったのだろうか。
市職員からの内部通報でログ調べて発覚
処分を受けたのは市の選挙管理委員会事務局長で、処分内容は減給10分の1(2か月)。2013年8月28日付けで、同日発表された。
市人事課の説明によると、市の職員から7月下旬に「事務局長が常習的にゲームをしている」などと内部通報があった。これを受けて事務局長のPCの利用履歴を調べたところ、12年8月1日から13年7月31日の1年間で計281時間にわたって「スパイダソリティア」に興じていたことが明らかになった。なお、利用履歴は1年分しか保存されていないため、12年8月よりも前に、どの程度ゲームをしていたかは明らかではない。
ゲームのヘルプ画面には、ゲームの目的について「ウィンドウ上部の 10 列の場札から、すべてのカードを最も少ない移動回数で取り除く」とあり、ゲームとしては比較的単純な部類だ。
では、281時間という長時間をゲームに費やす余裕があるような職場だったのだろうか。選管のウェブサイトによると、「委員会の会議に関すること」「委員会の規程その他の例規に関すること」といった27項目の業務を担当することになっている。
選挙シーズンにはある程度多忙になるとみられるが、これまでにどの程度選管の「出番」があったかに目を転じると、1999年4月から2013年7月の参院選までに、市町村合併をめぐる住民投票や最高裁裁判官に対する国民審査などを含めると、33回。年平均では2.3回投票が行われている計算になる。この1年では、12年10月の市議選、12年12月の衆院選、13年7月の参院選の3回が行われている。
選管事務局5人中4人が他事務局と兼任
選管事務局には5人が所属している。1人は選管専任だが、今回処分された事務局長を含む残り4人は他の部署との兼任だ。処分された事務局長も、財務監査を行う「監査委員」と、市職員の身分の権利を守る「公平委員会」の事務局を兼務していた。事務局長は3組織の事務局業務に携わっていたことになるが、それぞれの委員会の業務量は季節や政局によっても変動するという。そのため、市の人事課では、この事務局長の職場がどの程度忙しかったかは一概に言えない、としている。
ただし、事務局長が異様に「さぼっていた」というのは揺るぎない事実だ。泉南市では、職員の週の労働時間を38時間45分と規定。これを年間の労働時間に換算すると、有休取得分をカウントしなければ1930時間程度になる。単純計算すれば、事務局長は年の労働時間の14%程度をソリディアに費していたことになる。
市では281時間分の給与額にあたる約76万円を早急に返還するように求めており、事務局長も返還に応じる意向だ。
市は向井通彦市長名で、
「このたびの職員の不祥事により、市民の皆様の市政への信頼・信用を失墜させる事態を招いたことに対しまして心からお詫び申し上げます。今後、全職員が服務の根本基準である全体の奉仕者として、公共の利益のために職務に専念するという自覚を再認識のうえ、服務規律の一層の徹底と再発防止を図り、市民の皆様の信頼回復に努めてまいります」
との謝罪コメントを出している。