真夏のミステリー?長期金利が低位安定 日銀「異次元緩和」の効果がじわり

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   このところ長期金利(新規発行10年物国債利回り)が0.7%台で低位安定している。米国の長期金利は金融緩和縮小観測を背景に約2年ぶりの水準に上がるなか、これに連動しない独自の展開だ。

   長期金利に連動する住宅ローン金利も下がる傾向だ。株価が伸び悩み、債券に資金が流れている面もあるが、金利押し下げを狙って国債を大量に買い入れる、日銀の「異次元緩和」の効果がじわりと現れている格好だ。

0.6%も視野に入ってきた?

   長期金利は2013年8月21日に一時、0.720%にまで低下(債券価格は上昇)し、5月10日以来、約3カ月ぶりの低い水準となった。その後はやや上昇しているものの、0.8%台に乗せるような国債売りの勢いはない。

   長期金利は4月4日の異次元緩和の導入後、乱高下が続いた。しかし、5月下旬に一時1%に到達した後は、徐々に落ち着きを取り戻し、かつ低下傾向にある。日銀ウォッチャーの多くは「日銀が、毎月の新規国債発行額の7割に相当する大量の国債購入を続けている効果が出ている」と指摘する。 このため、市場では「0.6%も視野に入ってきた」との声も少なくない。

   他方で、通常は連動性の高い米国債は売られ、利回りが上昇している。8月下旬にきて一時2.9%台と約2年ぶりの高さとなった。5月下旬に2%を割り込んでいたことを考えれば、かなり急激な上昇が足元で進んでいると言える。

米国債に連動する形で欧州の優良国債も、上昇基調をたどる

   米金利が上昇しているのは、米連邦準備制度理事会(FRB)による現在の量的金融緩和第3弾(QE3)の縮小観測が、改めて強まっているためだ。早ければ9月中旬の米公開市場委員会(FOMC)、遅くとも年内には着手すると見られている。8月中旬以降の雇用や住宅関連の指標が市場予想を上回る強さを見せていることなどから、米景気が力強い回復基調にあり、景気テコ入れ策であるQE3は近く縮小すると金融市場が見ているためだ。

   米国債に連動する形で特に8月中旬以降、ドイツや英国といった欧州の優良国債も、上昇基調をたどっている。長く低迷した欧州全体が景気底入れを探っていることが背景にあるが、同様に景気回復基調にある日本の国債だけが米国債に連動しなくなっている格好だ。市場関係者の中にこれを 「真夏のミステリー」と呼ぶ向きもある。

住宅ローン金利も8月適用分は各大手行とも据え置きか引き下げ

   こんな状況に意を強くしているのが日銀だ。黒田東彦総裁は長期金利の低下について「毎月大量の長期国債を購入することによる下押し効果が、かなり効いている。この下押し効果は、今後とも累積的に強まっていく」と述べている。長期金利に連動する住宅ローン金利も、異次元緩和以降、日銀の狙いとは裏腹に3カ月連続で上がっていたのが、8月適用分は各大手行とも据え置きか引き下げ。通常は月初に決める金利を8月月中に引き下げる動きも起きた。企業への貸出金利も概ね低下しており、融資も徐々に増えている。金利低下→融資拡大→景気回復、という日銀のシナリオに沿った形だ。

   ただ、日銀は一方で2年で2%の物価上昇率目標を掲げる。安定的に2%の物価上昇となれば、長期金利も当然、今よりはかなり上がっているはずだ。金利が上昇に反転する局面はいつ訪れるのか、日銀の金融政策の舵取りを世界が注目している。

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