サッカー日本代表でイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド(マンU)に所属する香川真司選手に、古巣のファンが猛烈ラブコール――。今季開幕後も出場機会に恵まれないことから、ツイッター上で「マンUはシンジを返せ」と一大キャンペーンを繰り広げているのだ。
ファンは「#FreeShinji」とのハッシュタグを付けて、続々と香川選手に対する熱いメッセージを投稿。ツイッターで話題になっていることを表す「トレンドワード」として、一時は世界3位にまで上昇したという。
マンU新監督の戦術にフィットしない?
香川選手は2年間プレーしたドイツ・ブンデスリーガのボルシア・ドルトムントから2012年、マンUに移籍した。1年目はチームのリーグ優勝に貢献する活躍をみせたが、今季は開幕2戦いずれもベンチと状況が一転している。
マンUは今季、長年チームを指揮してきたファーガソン監督からモイズ監督に交代した。「フットボールレフェリージャーナル」を運営するサッカージャーナリストの石井紘人氏は、これが香川選手の立場に大きく影響したと指摘する。「今のところ、新監督が推し進めたい戦術に香川選手がフィットしないのでしょう」。
まだわずか2試合を消化したばかりで、今後カップ戦や欧州チャンピオンズリーグが始まれば、出番が増えるかもしれない。とはいえ、日本代表の大黒柱がベンチをあたためる現状に、日本のファンのみならず古巣ドルトムントのドイツファンも不安、かつ不満をためこんだ。そして、行動に移す。2013年8月28日ごろから「香川真司を解放せよ」とばかりに、ツイッターへの書き込みが殺到し始めたのだ。合言葉は「#FreeShinji」(シンジに自由を)。
ドルトムントは、2010~2012年の2シーズンでリーグ連覇を果たす。その立役者のひとりが香川選手で、ファンからも絶大な人気を得ていた。そんな「宝」のような選手をせっかくマンUへ送り出したのに、監督は起用しない。それなら我々のもとに戻すべきだ――。ファンはドイツ語や英語で次々と思いのたけをツイッターにぶつけた。
「マンUはドルトムントにシンジを返せ」「おうちに帰ってこい」。なかにはひたすら「#FreeShinji」を連呼して「帰還」を訴えるファンもいる。ツイート数は驚異的なスピードで伸びた。ドイツや日本だけでなく英国、アジアやアフリカからも投稿が寄せられた。
連続優勝に貢献、ファンサービスに積極的で心つかむ
マンUファンと思われるユーザーも黙っていなかった。「モイズ(監督)は今週末の試合で香川を使えよ」「ベンチに置いておくにはもったいない」と起用を望む声だ。日本のファンも参加しているが、むしろ「香川愛され過ぎだろ」とビックリした様子を隠せない。
「ロゴ」まで誕生した。香川選手が檻に閉じ込められているようなイラストが、ツイッターで出回る。「マンUから救い出せ」という意味のようだ。当初の勢いは収まったとはいえ、8月29日現在も書き込みは続いている。
既に移籍した選手にここまで愛着を寄せるのも珍しいと石井氏。「香川選手が在籍していた2年間で、ドルトムントは中堅チームからトップクラスに飛躍しました。香川選手自身も大活躍で、連続優勝へ貢献度が高かった。だからこそ、いまだにファンの心をつかんではなさないのでしょう」と話す。ファンサービスに積極的だった姿勢も、好印象を残しているようだ。
公式戦2試合を消化しただけで、今季の香川選手の動向を断定するのは早すぎる。石井氏も「すぐに移籍うんぬん、という話になることはない」と明言する。当面は様子見となるだろうが、監督の方針がずっと変わらず、ピッチに出られない不遇の日々が続くとすれば、熱烈なファンの待つ古巣に電撃復帰するというシナリオが現実味を帯びてくるかもしれない。