小泉元首相が「脱原発」を公言し、さまざまに取りざたされている。福島第1原発の汚染水問題で、収束宣言撤回も迫られている政府にはキツイ追い打ち。再稼働の機会をうかがう安倍政権は身内から足を引っ張られた格好だ。原発反対派からは歓迎の声があがる一方、真意を測りかねている様子もうかがえる。
毎日新聞の政治コラムが伝える
小泉元首相は国内の原発について「今ゼロという方針を打ち出さないと将来ゼロにするのは難しい」と、脱原発支持の態度を明確にした。発言を伝えたのは26日付け毎日新聞の政治コラム「風知草」。「小泉純一郎の『原発ゼロ』」という見出しが付いている。
それによると同元首相は今月中旬、脱原発に進路をとるドイツと原発推進に積極的なフィンランドを視察。同行した原発関連企業の担当幹部らが「われわれの味方になって」などと求めても、元首相は脱原発の態度を崩すことはなかった。コラム筆者が帰国後の元首相に視察の感想を聞くと、ゼロ発言が出たという。
原発存続を方針にする政府・自民党にとっては、微妙なタイミングでの発言だ。福島第1原発では汚染水漏れが収束どころか深刻化の一途。全漁連(全国漁業協同組合連合会)は東京電力に対して汚染水管理が破綻していると断罪、安倍首相が訪問先のカタールから言及するはめになり「政府が責任を持って対応していく」と強調した。また、1000年に一度ともいわれる猛暑が襲った今夏だが、原発がほとんど止まった状態のなかでも電力不足は回避された。