アベノミクスの効果なのか、2013年の夏休みに使うお金が全国平均で8万3622円と前年に比べ648円増え、3年ぶりに増加に転じたことが、明治安田生命保険の調査でわかった。
とりわけ「既婚子供あり」の世帯の支出は9万4092円と、前年比で7292円も増加し、2008年の調査開始以来、最高額となった。明治安田生命は「アベノミクス効果で景況感が上昇し、徐々に財布の紐が緩んできているのかもしれない」と、消費拡大に向けた潮目の変化に期待を寄せている。
ボーナスがと6.3%増えたことがプラスに働く
調査は7月、全国の20歳から59歳の男女を対象にインターネットで行い、1139人から有効回答を得た。「既婚子供あり」世帯の夏休みの過ごし方を尋ねたところ、「帰省」が前年比で5.3ポイント減少したのに対して、「国内旅行」「プール・遊園地・テー マパーク」「アウトドア」「海外旅行」の合計が2.4ポイント増加。交通費だけで宿泊費などがかからない「帰省」に対して、家族で旅行やレジャーに使うお金が増える傾向が鮮明になった。とりわけ「海外旅行」は2.3ポイント増、「国内旅行」は1.7ポイント増となるなど、人気だった。
この夏、海外旅行などレジャーに使うお金が増える傾向は、政府の統計からも裏付けられる。総務省が7月末に発表した家計調査報告(6月分速報)によると、ボーナス支給月に当たる13年6月のサラリーマン(勤労者世帯)の実収入は72万8678円で、前年同月比で実質2.0%増加 した。世帯主の月給(定期収入)は34万6355円と実質で0.7%減ったものの、ボーナスが22万1370円と6.3%増えたことがプラスに働いた。パートなど配偶者の収入も8万1227円と6.6%伸びており、この夏の勤労者世帯の収入は前年同月比で上向いた。
ボーナスが増えれば、消費者は支出にお金を回す
このためか、家族2人以上の世帯の消費支出は、国内パック旅行や宿泊料など「教養娯楽」の支出が前年同月比7.7%増と2カ月ぶりの実質増加に転じた。全体の消費支出が0.4%減とわずかに落ち込む中、教養娯楽費は「被服・履物」の8.1%増、「保険医療」の7.8%増に次ぐ高い伸びを示した。教養娯楽費の中では、宿泊料が33.0%増、国内パック旅行費が16.5%増、海外パック旅行費も16.3%増と高い伸びだった。家計調査で消費支出が増えた品目としては、 このほか外食の洋食代23.6%増、酒類の焼酎代20.4%増などが目立つ。
明治安田生命の調査と総務省の家計調査はぴたりと符合する。月給が必ずしも伸びなくても、ボーナスが増えれば、消費者は夏休みに旅行に出かけ、外食を楽しむなど、貯蓄よりも支出にお金を回すということだろう。これがアベノミクス効果なのは間違いなさそうだが、果たして景気好転は本物なのか。明治安田生命の調査によると、帰省で飛行機を利用した男女の約2割は格安航空会社(LCC)を利用するなど、節約に努めているという実態に変化はない。安倍政権は14年4月の消費税率引き上げを最終判断するため、有識者や各界の専門家ら60人から意見を聴く集中点検会合を8月31日まで開くが、まさに政権の経済運営の真価が問われるのはこれからだ。