シェールガス革命が日本の石油化学メーカーを滅ぼす 海外の「スーパーメジャー」に太刀打ちできない

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   過剰設備の解消に苦しむ国内石油化学メーカーに業界再編の足音が響いている。導火線に火をつけたのは米国のシェールガス革命だ。米国では2015年ごろから国際取引価格の3分の1程度といわれる低価格の天然ガスを活用した大型化学プラントの稼働が相次ぎ、合成樹脂や合成繊維といった化学製品の低価格化に拍車がかかる見通しだ。

   高コスト体質の日本の石化業界の競争環境がさらに厳しさを増すのは確実で、業界幹部は「輸出に活路を見いだしてきた業界の数年後の天気予報は土砂降り」と警戒感を示している。

中国や中東でメジャーが次々に大型プラント

   大手マスコミ関係者によると、業界大手首脳は8月開かれた業界紙との懇談会の席で「石油精製も化学も全部一緒になった完全なメジャー(巨大石油資本)で生き残るくらいのことを考えないといけない」と危機感をあらわにしたという。

   そこで例示したのが、米エクソンモービル、中国シノペック、サウジアラビアSABICなど海外の巨大企業だ。売り上げ規模ではいずれも日本の大手化学メーカーの2倍以上。石油の世界で川上に位置する資源開発から川中の精製や石油化学、川下の流通販売まで一手に手がけるスーパーメジャーだ。

   石油化学工業協会幹部は「メジャーの一角、英BPは7月に中国で米シェールガスを活用した大型化学プラントの建設を発表しました。米化学大手ダウ・ケミカルも6月にサウジ国営サウジアラムコと共同で同国に大型化学工場建設のため約1.8兆円を投じる計画を打ち上げています」と話す。資源調達力と資金力を生かした巨大メジャーの動きを国内勢は青息吐息の表情で見守るしかないのが実情なのだ。

   高コストの輸入資源であるナフサ(粗製ガソリン)を主原料にしてきた日本の石化産業は、中東に比べてコスト差が20~30倍になるともいわれ、円高が少々修正された程度では太刀打ちできない。

国内勢力は生産設備の集約を進める

   確かに国内大手化学メーカーはこの数年、主要顧客である自動車、電機メーカーなどの海外生産拡大に対応し、石油化学の基礎原料エチレンなどの生産設備集約を進めてきた。8月初旬、業界最大手の三菱ケミカル傘下の三菱化学と旭化成ケミカルズが、共同で運営する水島工場(岡山県倉敷市)のプラント1基(エチレン生産能力年44万トン)を2016年春に閉鎖すると発表。2015年に千葉工場のエチレンプラント停止を決めている住友化学に続く動きを見せた。これより前に、三菱化学が昨年、鹿島事業所(茨城県神栖市)のエチレンプラント2基のうち1基を2014年に止めると決断済みだ。

   だが、業界の供給過剰体質の抜本解決には程遠い。国内大手の稼働率は2008年のリーマンショック以降、損益分岐点とされる90%を大幅に下回る状況が続いている。赤字体質からの脱却は各社共通の課題だが、今回の三菱・旭化成の設備停止を含め国内で15基あるエチレンプラントのうち3基が停止した後でも、内需500万トンに対し年100万トン程度の生産能力の過剰が続く。

   各社はこれまで、国内需要を上回るエチレンなどの化学製品を中国などに輸出してきた。そこにのしかかるのが、英BPなど欧米勢による対中投資の動きだ。さらに、中国では新疆ウイグル自治区など内陸部で石炭由来のガスなどを活用した化学工場の建設計画が相次ぎ持ち上がっている。こうした設備の運転開始が集中する2016年ごろからは「日本からの輸出はますます困難になる」と予測され、逆に「国内需要の一部も低コストの海外品に置き換わっていく可能性が高い」(業界首脳)との声もあるほど。

   「日本でしかつくれない高付加価値品をつくれるか」(業界首脳)がポイントだが、簡単な話ではない。「抜本改革に手を付けられないまま我慢比べを続け、業界全体が衰弱していく」(業界紙関係者)との悲観論も、あながち的外れとは言えないようだ。

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