国内勢力は生産設備の集約を進める
確かに国内大手化学メーカーはこの数年、主要顧客である自動車、電機メーカーなどの海外生産拡大に対応し、石油化学の基礎原料エチレンなどの生産設備集約を進めてきた。8月初旬、業界最大手の三菱ケミカル傘下の三菱化学と旭化成ケミカルズが、共同で運営する水島工場(岡山県倉敷市)のプラント1基(エチレン生産能力年44万トン)を2016年春に閉鎖すると発表。2015年に千葉工場のエチレンプラント停止を決めている住友化学に続く動きを見せた。これより前に、三菱化学が昨年、鹿島事業所(茨城県神栖市)のエチレンプラント2基のうち1基を2014年に止めると決断済みだ。
だが、業界の供給過剰体質の抜本解決には程遠い。国内大手の稼働率は2008年のリーマンショック以降、損益分岐点とされる90%を大幅に下回る状況が続いている。赤字体質からの脱却は各社共通の課題だが、今回の三菱・旭化成の設備停止を含め国内で15基あるエチレンプラントのうち3基が停止した後でも、内需500万トンに対し年100万トン程度の生産能力の過剰が続く。
各社はこれまで、国内需要を上回るエチレンなどの化学製品を中国などに輸出してきた。そこにのしかかるのが、英BPなど欧米勢による対中投資の動きだ。さらに、中国では新疆ウイグル自治区など内陸部で石炭由来のガスなどを活用した化学工場の建設計画が相次ぎ持ち上がっている。こうした設備の運転開始が集中する2016年ごろからは「日本からの輸出はますます困難になる」と予測され、逆に「国内需要の一部も低コストの海外品に置き換わっていく可能性が高い」(業界首脳)との声もあるほど。
「日本でしかつくれない高付加価値品をつくれるか」(業界首脳)がポイントだが、簡単な話ではない。「抜本改革に手を付けられないまま我慢比べを続け、業界全体が衰弱していく」(業界紙関係者)との悲観論も、あながち的外れとは言えないようだ。