筋通らない「軽減税率の適用を、再販制度の維持も」の主張
また、新聞社にコーポレート・ガバナンスが効かないと、新聞社を頂点とするメディア全体にもコーポレート・ガバナンスが効かなくなってしまう。新聞社に不都合な視点があると、それに関連する記事は歪んでしまうだろう。だから、新聞のガバナンス論はどこか絵空事が多い。
こうした歪みは最近の消費税議論にも見られる。その理由は新聞業界が軽減税率を求めて消費税増税に賛成しているからだ(たとえば、2011年8月11日付け本コラム)。
新聞業界の特殊性については、この際もっと知っておいた方がいい。有名なものとして再販制度がある。これは独禁法適用除外の事実上のカルテルによってデフレ下でも価格下落が免れている。こうした再販制度は先進国でまずない。欧州並みという名目で軽減税率を主張しつつ、欧州にはまずない再販制度の価格カルテルを維持してくれでは筋が通らない。競争政策や増税議論の記事では、よく注意しなければいけない。新聞業界も自らの利益を追求するのは当然であるし、読者もそれを知って、記事を読む必要がある。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。