「週刊少年チャンピオン」などを発行する出版社の「秋田書店」(東京・千代田区)が読者プレゼントで景品数を水増し掲載していた問題が、さらに拡大しそうな様相を見せている。
「商品の数と当選人数が合わない」と上司に指摘した女性社員が、パワーハラスメントを受けた上、不当に解雇されたと報じられたのだ。
「会社にいたかったら文句を言わずに黙って仕事をしろ」
秋田書店は2010年5月から12年4月まで、女性向け漫画雑誌「ミステリーボニータ」「プリンセス」「プリンセスGOLD」の3誌で、実際の当選者数より多く当選人数を記載していた。例えば「ミステリーボニータ2011年2月号」では、2人に当たると記載された「ニンテンドー DS Lite」、1人に当たると記載された「全国百貨店共通商品券1万円分」は誰にも発送されず、50人に当たると記載された「リボン型ヘアクリップ」は3人にしか発送されなかった。
消費者庁は13年8月20日付で、これらの懸賞が景品表示法に違反していたと一般消費者へ周知徹底させるとともに、再発防止策を講じて役員と従業員に周知徹底させること、今後同様の表示を行わないことを命令した。
翌21日には、さらなる問題が明るみに出た。
労働組合「首都圏青年ユニオン」が「レイバーネット日本」のサイトで、景品数の水増し命令を拒否した女性編集部員がパワーハラスメントで病気休職、のちに解雇され、ユニオンに加入したことが発端となって明らかになった問題だとの文章を掲載した。
21日付の毎日新聞夕刊でもこの問題を詳しく取り上げている。
女性は上司から「会社にいたかったら文句を言わずに黙って仕事をしろ」と言われ、不正を働くことへのストレスで病気になり11年9月から休職。12年2月に「多数の読者にプレゼントを発送せず、不法に窃取した」との解雇通知書が送られてきたというのだ。女性側は「罪をなすりつけて懲戒解雇された」と訴えているという。
「うちでもやっていた」元出版社員の告白
出版社の信用を揺るがす大問題に思えるが、以前出版社に勤務していた男性に話を聞いてみると、「うちでもやっていた」と打ち明けた。
男性の会社では、他の業務に追われてプレゼントの発送まで手が回らず、結局発送せずに終わってしまったケースが数回あったという。社内を整理していたら大量に未発送の読者プレゼントが出てきたこともあったそうだ。
一度「大丈夫でしょうか」と上司に言ったところ、「それで夢を見させてあげることも読者サービスのうちだ」と返されたという。
発送できないのなら懸賞をやらなければいいのに、というのが率直な感想だが、男性は「懸賞をやることで、スポンサーから読者プレゼント用に商品をもらえるような力のある雑誌ということを見せつけたいという側面も出版社にはある」と話していた。