国内LCC、お盆の搭乗率伸び悩む エアアジアは新ブランド「バニラ」で仕切り直し

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   「LCC元年」と呼ばれた2012年から1年がたち、国内線を運航する格安航空会社(LCC)の多くが苦境に立たされている。予約に不可欠なウェブサイトの使い勝手の悪さや、遅延や欠航が相次いだことがその理由だ。LCCの中でも明暗が分かれており、新ブランドで「仕切り直し」を迫られる会社も出てきた。

便数は大幅に増えたが乗客の伸びが追いつかない

新ブランド「バニラ・エア」を発表するエアアジア・ジャパンの石井知祥(とものり)社長
新ブランド「バニラ・エア」を発表するエアアジア・ジャパンの石井知祥(とものり)社長

   航空各社は2013年8月19日、お盆期間(8月9日~18日)の利用状況を発表した。国内線は各社とも、割引運賃で需要喚起に成功し乗客は増えた。ただし、大手とLCCでは、搭乗率では違った傾向を示した。

   例えば日本航空(JAL)グループの場合、提供座席数が前年比2.3%増の145万2050席で、乗客数が4.5%増の110万4185人。座席数の伸びよりも乗客の伸びの方が大きく、搭乗率は上がっていることになる。全日空(ANA)グループも同様で、座席数が2.7%増の206万0732席で乗客数は5.4%増の154万3340人。いずれも、搭乗率にして1~2ポイント伸びている。

   一方、LCC3社を見ると、関西空港を拠点にするピーチ・アビエーションの座席数は前年比207.3%の8万2080席に対して、乗客数は同205.7%の7万6821人。成田空港が拠点のジェットスター・ジャパンは座席数が同437.5%の12万6000席、乗客数が同421.3%の10万8657人。エアアジア・ジャパンは座席数が同152.5%の3万2400席、乗客数が同144.3%の2万7942人だった。

   LCC各社の搭乗率は86%~93%で、大手2社の75~76%と比べると非常に高い。だが、前年と比べると落ち込みを見せており、収益面では課題が残った。これは、新路線を次々に開設して提供座席数が大幅に増えたものの、乗客の伸びがそれに追いついていないことを示している。

LCC利用は「西高東低」

国内のLCCでは「ピーチ」が一人勝ち状態だ(写真は7月末から就航している「ルネガール」ラッピング機)
国内のLCCでは「ピーチ」が一人勝ち状態だ(写真は7月末から就航している「ルネガール」ラッピング機)

   さらに、LCCの中でも明暗が分かれているようだ。JTB総合研究所が13年6月下旬から7月上旬にかけて12年以降に飛行機で旅行をした関東・関西の人を対象に行った調査によると、国内線LCCを利用したことがある人の割合は11.5%にのぼった。その内訳を見ると、見事に「西高東低」だ。関西在住者では18.8%にのぼったのに対して、関東在住者は8.3%にとどまった。この傾向は実際の搭乗率にも反映されている模様で、4~7月でピーチが8割を超えているのに対して、残り2社は6~7割にとどまっている模様だ。その意味では、関西国際空港に拠点を置くピーチの「一人勝ち」だとも言える。

   実際、「負け組」だとも言えるエアアジア・ジャパンは「仕切り直し」を余儀なくされた。同社はマレーシアのLCC、エアアジアとANAホールディングスの合弁会社だったが、収益があがらないことなどを理由にエアアジアが資本を引き上げたためだ。13年10月26日まではエアアジア・ジャパンのブランドで運航し、一旦運休した上で、12月下旬に新ブランドで運航を再開する。

「シンプルで洗練された味わい」で出直し

   8月20日には、新ブランドを「バニラ・エア」、社名を「バニラ・エア株式会社」にすると発表。世界中で親しまれている「シンプルで洗練された味わい」をイメージし、身近に空の旅を利用してほしいという思いを込めたという。具体的な就航路線は9月下旬に発表されるが、成田空港を拠点にしたリゾート・レジャー路線に特化した上で国際線に比重を置くという。

   国内線が中心の現在の路線構成からは大きく方針転換する形だが、石井知祥(とものり)社長は、その狙いを「(飛行機の)稼働(飛んでいる時間)が長いことと、(客)単価がそれなりに取れる」と説明した。

   また、エアアジア・ジャパンの失敗については

「(他のLCC2社は)機材投入や路線便数の展開が早かった。非常に路線展開が遅かったことが大きかった。路線競争力が劣っていたのが大きな要因」

と総括。マレーシアのエアアジアと一体で使いにくいと不評だったウェブサイトの予約システムについても、

「日本のお客様にとっては使い勝手が悪く、安定性がない。自らのシステムを12月までに作る」

と、エアアジアからは切り離す方針だ。

   現在5機ある飛行機はマレーシア側に返却し、12月までに改めて2機を確保。一時的には大幅に路線縮小するが、14年度に8機、15年度までに10機体制を目指す。

   石井社長は囲み取材を終え、報道陣に

「どうそ、宜しくお願いします!絶対成功させます!」

と頭を下げて会見場を後にした。

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