楽天の田中将大投手が2013年8月16日、21連勝の新記録を作った。驚異的な出来事といえるのだが、これは近い将来、大リーグに行くことを暗示する記録ともいえるだろう。
押しも押されぬ「球界のエース」に
田中の連勝は2012年8月26日の日本ハム戦での勝利から始まった。4連勝でシーズンを終え、今年は開幕から17連勝。この間、27試合で219イニングを投げ、防御率は1.03。
「記録はシーズンが終わってから振り返りたい」
新記録達成後のコメントである。いつも通りの態度で、はしゃいだりすることはなかった。エースとしての風格が感じられた。
これまで記録を持っていたのは巨人の松田清と西鉄の稲尾和久。松田は1951年、19連勝のままシーズンを終え新人王。翌年1勝して20連勝とした左腕だが、メディアは稲尾の記録を抜いたことを強調した。
稲尾は「鉄腕」の異名をとり、日本シリーズで巨人をやっつけ「神様仏様稲尾様」とうたわれた伝説の大投手。「稲尾越え」となった記録更新は、田中のすごさをより一層高めることになった。
「私が今まで見てきた、会った投手で最高の投手」
楽天の星野仙一監督はそうたたえた。また、田中をドラフトで獲得したときの監督だった野村克也氏も実力を評価した。
「彼のすごいところはピンチに強いこと。野球界のエースだ」
「若返り」が急務のヤンキースのターゲット?
これだけの実績を重ねている田中を、メジャーは見逃さないだろう。日本駐在の大リーグ球団スカウトは言う。
「いますぐメジャーで通用する。かなりのチームが獲得の本格的な準備に入るだろう」
ダルビッシュ有(レンジャース)の好成績で味を占めた大リーグ。次の標的が田中であることは間違いない。9イニングを投げるスタミナ、ピンチに強い精神力、豊富な球種、コントロールの良さなど、どれをとってもローテーション投手の力量を持っている。勝てば勝つほど田中の大リーグ行きは確実になるということだ。
ベテランが多く、若返りが急務のヤンキースなどは契約金、年俸をいくら積んでもほしい投手のはずである。エース格の黒田博樹は38歳だし、一度引退した39歳のアンディ・ペティットに先発を託しているほどの台所事情だ。最高のクローザーといわれるマリアーノ・リベラも今季限りで引退する。
田中の今季の年俸は4億円。メジャーなら10倍でもおかしくない。もしヤンキースなら50億円は出すだろう。それに3年ないし5年の複数年契約を取れる。
「早ければ来シーズンにも海を渡る可能性がある」
そういう声が浮上してくることは時間の問題だ。今年の秋からオフは田中に話題が集中するだろう。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)