日本がリードしている生命技術の1つ、動物胎内でのヒト臓器作り研究の解禁が現実味を帯びている。総合科学技術会議の生命倫理専門調査会(座長・原山優子議員)が2013年8月1日の会議で容認の結論をまとめ、規制元である文部科学省に送ったからだ。
脳や生殖細胞などについては一定の制限
対象になっているのは「動物性集合胚」 (胚とは受精卵が分裂を始めた段階) 研究。遺伝子操作で動物の特定の臓器を作れないようにした胚にヒトの臓器細胞をまぜたものを動物の子宮内に入れて育てると、動物性集合胚になる。その結果、人間の臓器を持つキメラ動物になる。すでに東大医科学研究所グループはブタに別のブタのすい臓を作らせることに成功している。
しかし、2001年にできたヒトクローン技術規制法にもとづく文部科学省の指針では、当時の科学技術会議の議論を経て、動物性集合胚を実験室で育てるのは14日までで、人間や動物の子宮に戻すことは禁じられている。このため、移植に使えるような人間の臓器をブタに作らせる、といった研究まではできなかった。指針による規制がゆるめられれば、作った臓器が十分実用になるか、より実用性を高める方法、なども可能になる。
専門調査会は昨年から7回にわたって専門家からの聞き取りや海外の実情調査報告などにもとづいて議論し、人間の脳や生殖細胞などの一定の制限を認めながら,そうでない動物性集合胚を動物胎内に移植することを認めるべきだ、との見解をまとめた。また、その見解を踏まえ、文部科学省が早急に指針の見直しを行うよう求めた。
(医療ジャーナリスト・田辺功)