東京都を主な地盤とする東京都民銀行(本店・港区)と八千代銀行(本店・新宿区)が、来秋にも共同持ち株会社方式で経営統合する方向で協議に入った。「地方銀行」と称される地域密着型の銀行は「地域の名士」として尊重され温存されてきた経緯もあり、メガバンクにようなダイナミックな統合再編が進んでいない。しかし、最近のような国債運用頼みの経営には限界も指摘されている。監督官庁の金融庁も後押しするなか、地銀の再編がさらに続く可能性がある。
統合すれば関東圏の地銀で6位に
東京都民銀行は東京都や東京商工会議所の支援を受けて1951年に設立された地銀。2013年3月末の預金量は2兆3619億円、貸出金残高は1兆7869億円。八千代銀行は東京都のほか神奈川県も地盤とする第二地銀。1991年に信用金庫から普通銀行に転換。2000年には経営破綻した旧国民銀行の営業を譲り受けた。3月末の預金量は2兆569億円、貸出金残高は1兆3768億円。従業員は両行とも約1600人で、両行とも東証1部上場だ。両行はATMの相互解放や中小企業向けの合同商談会などで提携関係にあり、統合の下地はある。
両行が統合すれば預金量は単純合計で4兆4000億円超になり、関東圏の地銀では横浜、千葉、常陽、群馬、足利に次いで6位に浮上する。
日本経済新聞が、両行が統合協議に入っていることを報じた8月5日、両行とも「現時点で開示すべき具体的な決定事実はありません」とのコメントを発表した。「決定事実なし」は市場で「ほぼ認めている」と受け取られるコメントだが、都民銀はさらに「首都圏に基盤を置く地方銀行として、企業価値向上に向けた様々な検討を行っている」と踏み込んだ。今春、「三井造船と統合交渉」の日経報道を公表コメントで強く否定しながら、実際は交渉していた川崎重工業が東証などから非難されたことを意識していると見られている。
地銀は「地方の一国一城の主」だから・・・
それはともかく、地銀の再編はこれまで進んでいなかった。なにしろ、1990年3月末に13あった都市銀行が今年の3月には6と半減(グループ傘下銀行数の合計で、グループ数は4)なのに、地銀は同じ期間に64のまま変わらなかった。第二地銀は68から41に減ったが、経営が悪化し吸収合併などの形で消えたケースがほとんど。
地銀の再編が進まない理由として「地方の一国一城の主としてのプライドの高さ」(大手行幹部)を指摘する声が多い。行名が変わったり、誰かの軍門に下ったりするかのような再編など考えたくもないということだろう。第二地銀とも違って「県などの指定金融機関になっているなど、努力しなくても預金が集まり、有力な取引先にも恵まれている」(金融当局)から、さほど経営も悪くない。
しかし、人口減で衰退気味の地方経済と地銀の経営が無縁であるわけもなく、いつまでも安泰なわけもない。中小企業の資金需要は低迷し、メガバンクなどと激しい住宅ローンの競争を戦わねばならない。これまで融資による利益の減少を穴埋めしてきた国債の売買益も、日銀の異次元緩和で今後は儲からない可能性が高い。それどころか、長期金利上昇で国債の保有自体がリスクとなることも予想されている。
経営環境の悪化が見込まれるなか、県境を越える広域再編によって規模拡大と経営効率化を同時に進めることが地銀の喫緊の課題、というのが3年目に入った畑中龍太郎金融庁長官の持論とされる。過当競争に限界を感じ、都民銀に続く地銀が現れそうな雲行きだ。