浜岡原発停止で思い切った手段
東日本大震災に伴う東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で、中部電の唯一の原発である浜岡原発は「超法規的な停止」に追い込まれ、再稼働のめどが全く立たない状況になっている。このため、同社は厳しい経営環境に直面している。「収益基盤を確保するには、従来の常識にとらわれない思い切った手段に出ざるを得なかった」(電気業界関係者)という現実が大きい。
また、原発再稼働がかなわない中でコスト増にあえぐ東電は電気料金の値上げを行っている。首都圏の顧客は値上げによる負担増に不満を強めており、「割安な電力を提供できさえすれば、首都圏の顧客を獲得できる」(中部電関係者)とのソロバンも働いた。中部電がダイヤモンドパワー買収と同時に石炭火力発電所の新設にも踏み切ったのは、石炭が石油や液化天然ガスなどの火力燃料と比べて割安なため、競争力のある電気料金を提示できると踏んだためだ。
人口の多い首都圏は、中部電に限らず、他の電力会社にとっても潜在的な魅力の大きい市場だ。「中部電が一歩を踏み出したことで、後に続くケースが出て来るかもしれない」(業界関係者)との見方は少なくない。既存の電力会社による首都圏での競争は、新電力の多様な事業展開を活発化させる可能性もある。電力市場に、今度こそ本格的な変化は起きるのだろうか。