栃木県を地盤とする地方銀行の足利銀行を傘下に持つ足利ホールディングス(HD)<本社・宇都宮市>が、東京証券取引所に上場を申請した。順調に進めば、年内に再上場を果たす見込みだ。
2003年11月の経営破綻後の上場廃止(2004年1月)以来、約10年ぶりの株式市場復帰となる。りそなホールディングスなども含め、2000年前後に経営破綻や実質国有化に追い込まれた足利銀行のような「問題銀行」はこのところの株式市場の好転もあって、再生の歩みを着実にしている。
筆頭株主は野村ホールディングス
足利HDは筆頭株主の国内証券最大手、野村ホールディングスや、監督官庁の金融庁などと再上場に向けた協議を始めた。2013年3月期の連結経常利益が8・7%増の186億円となるなど業績も改善しており、安倍政権の経済政策「アベノミクス」で足元の株式市場が活況を呈するなか、「機は熟した」と判断した模様だ。日経平均が7000円台に低迷した民主党政権時のような局面では株の買い手も現れず、思うような株価がつく期待が持てないため上場には適さない。実際、2010年に再上場の検討に入ったが、断念した経緯がある。経営破綻した銀行の再上場という意味では、2006年のあおぞら銀行(旧日本債券信用銀行)以来となる。
足利HDは預金量が4.7兆円程度と地銀の中では比較的規模が大きく、関東圏では横浜銀行や千葉銀行などに次いで5位に位置する。それだけに、つぶれたら金融システムに影響しかねないとして、「一時国有化」などの支援に政府が動いた。
もともとは地元の繊維産業とともに発展した堅実な地銀だったが、バブル期に不動産融資を膨らまし、不良債権を抱えて破綻に追い込まれた。国有化後は不良債権処理を進め、財務体質を健全化。金融庁は再建に向けたスポンサー探しに動き、2008年3月に野村グループに譲渡することを決めた。2010年3月期には最終損益が黒字転換し、再上場に向けた準備に入れる状況を迎えていた。
あおぞら、りそなHDなども再生進む
野村HDは世界的な規制の強化を受け、問題企業などに投資して再生させたうえでその企業の株を売って資金を回収する、投資銀行的な業務は縮小している。「すかいらーく」など既にあらかた手放しており、国内では最後まで残った、とも言えるのが足利HDだ。
野村と金融当局との協議では、足利HDを軸に地銀を再編するような構想もあったようだ。しかし再生を印象づける狙いもあり、足利HDとしても悲願の再上場をまずは優先させることにしたと見られる。
足利HDのような問題銀行の再生は進んでいる。同じく2003年に実質国有化された、りそなHDは今年5月、注入された公的資金を5年以内に完済する計画を発表。1998年に経営破綻した現あおぞら銀行(旧日債銀)も昨年8月、公的資金を10年で完済すると表明。同じく1998年に経営破綻した現新生銀行(旧日本長期信用銀行)も着々と業績を上向かせている。それぞれの「発生」から10~15年。バブルの処理にはそれだけ時間を要する、ということを示してもいる。