「かき氷」といえば、暑い夏に食べたくなるおやつの定番だ。赤や緑、青など色とりどりのシロップをかけてむしゃむしゃ食べ、たまにこめかみがキーンと痛くなる…そんな思い出がある人は多いのではないだろうか。
そんなかき氷が今、「大人のスイーツ」としてブームになっている。それも、フワフワの天然氷にこだわりのシロップやフルーツをトッピングした、「高級かき氷」が人気なのだ。
1000円超えかき氷にも「高いと感じる客いなさそう」
埼京線・十条駅近くの「だるまや餅菓子店」(東京・北区)では、「和三盆」(1000円)、「特選宇治金時」(1180円)、「極上イチゴ」(1500円)など、1000円台のかき氷が豊富に揃っている。時間帯によっては行列もできる人気店だ。2013年8月上旬の日曜日に特選宇治金時を食べに訪問した同僚記者によると、「家族連れやカップルが、写真を撮ったりしながら喜んで食べていた。『高い』と感じている客はいない感じだった」とのことだ。
だるまやは通年で販売しているが、期間限定だと「虎屋菓寮」(東京・赤坂、京都・一条など、9月中旬まで)、「松崎煎餅 お茶席」(東京・銀座、9月末まで)で「1000円超え」のかき氷が味わえる。
こうしたかき氷の売りは「丁寧に削り出した、繊細な口当たりの氷」「特選の宇治抹茶、丁寧に作った小倉あんを使用」といったもの。素材へのこだわりが高めの価格設定につながっているようだ。
「高級かき氷」を提供しているのは甘味処だけではない。
レストラン「マキシム・ド・パリ」では高級シャンパンを氷に注ぐ「ドンペリかき氷」を13年10月末まで提供している。1杯2100円という、かき氷としては驚きの価格だ。
ザ・キャピトルホテル東急(東京・永田町)のオールデイダイニング/ラウンジ「ORIGAMI」では13年8月末まで、スパイシーなフルーツをトッピングしたかき氷「ホットフルーツカクテル」(1500円)を販売している。
「かき氷は極上、特別のごちそうスイーツ」
インターネット上ではこうした「高級かき氷」について「とらやのかき氷最高」「松崎煎餅のかき氷、氷がフワフワ」「噂のドンペリかき氷、行ってきた」など、「食べてみた」という書き込みが大量にある。「売り切れで食べられなかった」という声も上がっているほどで、人気のほどがうかがえる。
近年のかき氷人気の背景について、かき氷のイベント「東京かき氷コレクション」を運営する「かき氷コレクション実行委員会」代表の小池隆介さんに話を聞いた。
氷の削りやシロップにこだわった店が増え始めたのは10年ほど前だという。その後、東日本大震災が発生した11年の夏、猛暑の中の節電対策の一環として「かき氷で涼をとる」ことが注目されたのでは、と小池さんは見ている。この年に女優の蒼井優さんによるかき氷のガイドブック「今日もかき氷」が出版されたことも人気の後押しになったようだ。
多くの人がとりつかれる「かき氷の魅力」については、
「かき氷は基本持ち帰ることができない。しかもあっという間に溶けてしまい、美味しい時間が長く続かない食べ物。店主がおいしいフルーツを使って生シロップを作り、氷を削る技術を磨いて作るかき氷は極上のごちそう、そこでしか食べられない特別のごちそうスイーツでもあります。かき氷は昔から、海水浴・夏休み・縁日を連想させる『特別な日』の食べ物で、かき氷という言葉で楽しい思い出が蘇ってくる不思議な食べ物でもある。かき氷店主はそういった楽しみを提供したい、『かき氷の素敵な思い出を作ってほしい』と言う人も多くいます」
と熱く語ってくれた。
「かき氷コレクション」では、かき氷の食べ歩きガイドブック「かきごおりすと」を刊行している。かき氷コレクションの公式サイト、TSUTAYA三軒茶屋店、代官山蔦屋書店、MARUNOUCHI READING STYLE、ヴィレッジヴァンガード三軒茶屋などで購入できる。
なお、47都道府県別ご当地情報サイト「Jタウンネット」では「この夏食べた忘れられないかき氷」のレポートを募集している。