終戦の日を直前に控えた2013年8月14日夕方、靖国神社で安倍晋三首相を批判する声明を発表することを目的に、韓国野党の国会議員ら4人が羽田空港から入国した。だが、いざ議員らが靖国神社に向かおうとすると、途中で警察に停止を求められて計画は「不発」に。神社から500メートルほど離れた場所で声明文を読み上げたが、右翼団体とみられる男性と小競り合いになり、警察官から車に押し込められる形で「退却」を余儀なくされた。
空港到着から出てくるまでに2時間以上かかる
来日したのは左派野党の民主党に所属する李鍾杰(イ・ジョンゴル)、李相珉(イ・サンミン)、文炳浩(ムン・ビョンホ)の3議員。同党の李竜得(イ・ヨンドゥク)最高委員も同行した。3人の来日の目的は、8月13日時点で聯合ニュースが「靖国神社で声明発表を兼ねた記者会見を開き、日本の安倍政権の右傾化の動きに遺憾を表明」することだと報じており、実際に一行は、入国審査で「政治目的で靖国神社に行く」と話した模様だ。このことが影響したのか、航空機が到着してから入国審査が終わるまで約2時間もかかった。
だが、8月15日に議員らが靖国神社を訪れることはなかった。議員一行は同日朝、都内のホテルをタクシーで出発した。だが、すでに神社には議員らに反発する人が待ち構えており、警察は「不測の事態が起こる」として議員を説得。議員側もこれを受け入れ、神社から500メートルほど離れた路上で
「安倍政権の軍国主義に反対!」
とかかれた横断幕をかかげ、抗議活動を展開した。このときの様子が、李鍾杰議員のブログで公開されている。
ブログで一時始終記録した動画を公開
ブログには
「周辺国を侵略した日本はまだ過去の歴史に対する正しい反省すらしないままに集団自衛権を認める憲法改正を通じて軍国主義での回帰を試みている。 また、放射能汚染水流出について、周辺国にきちんと知らせることさえしなかった」
といった主張とともに、ユーチューブの動画が埋め込まれている。動画の時間は18分程度。
動画には、警備員や警察官が
「トラブルになるんで、ここでお願いします!」
と呼びかけ、これを受ける形で、議員がその場で声明文を読み上げる様子が収録されている。中年男性が
「おい、通せよ!」
などと韓国側の抗議活動に乱入しようとし、警官が「あわてない!あわてない!」と静止する一幕も。次第に小競り合いはひどくなり、最後は警官が
「危ないので保護します!」
「保護でーす!」
「守るんですよ!」
「乗って乗って!」
などと議員らを半ば押し込める形で警察車両に乗せ、その場を後にした。
動画タイトル「靖国神社の前で太極旗を広げる!」はウソ
なお、動画のタイトルは
「第68周年光復節に靖国神社の前で太極旗を広げる!」
と仰々しいものだが、必ずしも実態を反映したものだとは言えない。そもそも靖国神社にたどりつくことすら出来てない上に、動画を見る限りでは、議員は韓国国旗(太極旗)を懐から取り出しはしたものの、広げる間もなく警察車両に「保護」されているからだ。
菅義偉官房長官は、同日の記者会見で、
「韓国政府に対して、そうした議員に対して行動の自制を呼びかけるように協力要請を行ってきた。それにもかかわらず、そうした議員の人たちが、そのような行動をとったことはきわめて遺憾」
と議員らの行動を批判している。