猛暑に多少の涼しさをもたらすのか怪談だ。永田町でも首相公邸(旧官邸)に「幽霊が出る」といううわさが再びささやかれ始めた。安倍晋三首相が就任から7か月たっても東京・富ヶ谷の私邸から通勤を続けていることも、そのうわさに真実味を持たせる一因となっている。
官邸時代にはテロの舞台にもなった
「幽霊が出るから嫌なんです」。安倍首相は2013年7月30日に自民党幹部を公邸に招いて開いた会食で公邸に引っ越さない理由を聞かれ、冗談交じりにこう応えたという。6月に出演したテレビ番組では、うわさを「都市伝説」だとして否定していた安倍首相だが、旧知の自民党関係者を前に、つい本音が出てしまった可能性もある。
公邸は1929年に首相の職場にあたる首相官邸として建てられ、しばしばテロの舞台にもなった。1932年の5・15事件で犬養毅首相が、36年の2・26事件では岡田啓介首相の義弟などが射殺されるなど、いわば「血塗られた歴史」を持った場所でもある。2002年4月に73年間の官邸としての役割を終えたが、昭和初期に流行した「ライト風」建築の代表例で、「歴史の証人」として保存が決まった。南に50メートル移動した後にリフォームされ、05年4月から首相の住居にあたる公邸として利用されている。