40年超えて運転は安全対策費がかさむ
審査が後回しにされた6基について、規制委は厳しい態度を示す。高浜3、4号機は、敷地の高さを超える津波が来ると予測した福井県の試算を反映しない関電の姿勢を問題視、審査を後回しにされた。泊1、2号機については、重大事故時の解析で構造の異なる新鋭の3号機のデータを流用している点が「明らかな準備不足」と厳しく批判され、審査は保留。大飯3、4号機も、敷地内に活断層がないかの判断がつくまで保留とされた。
今後、さらに問題になるのが「40年廃炉」で、古い原発は存続の岐路に立つことになった。今回の改定で、原発運転期間は原則40年、例外として1回に限り最長20年まで延長可能だが、そのために新基準への適合とともに、機器の検査対象を通常より拡大した「特別点検」をクリアしなければならない。
新基準ではケーブルを難燃性にし、非常時の炉心冷却用配管の多重化を求めるなど、対策費がかさむ。「特別点検」では原子炉格納容器、圧力容器の点検範囲の拡大や、原子炉建屋のコンクリートのサンプル調査などが必要で、これも金食い虫。電力会社はこうした費用を勘案して「廃炉か延命か」との判断をすることになる。
こうした新基準の厳しさから、専門家の間では50基の原発のうち再稼働が見通せるのは、せいぜい30基程度との見方もでる。
国内で唯一稼働中の大飯3、4号機も9月の定期検査入りで停止し、再び原発稼働ゼロに戻るなか、優先審査の6基についても地元との調整も含め、再稼働への道筋は容易に描けそうもない。