経団連は政党に対する政策評価の公表を3年ぶりに再開する。同評価は経団連が企業献金のあっせんを取りやめた際に、加盟企業・団体に個別判断での献金を呼び掛ける指針として導入された。
2013年7月の参院選で自民党が圧勝し、同党を中心とする政権基盤の安定が見込まれる状況となったため、2009年の政権交代を機に各企業が減額・停止していた自民党への献金増額・復活を促す。疎遠になったとされる政権と財界総本山との関係を緊密にする狙いがあるようだ。
自民圧勝で献金引き上げの動き
「政治にかかるコストを一定程度負担するのは企業の社会的責任だ」(大手電機メーカー首脳)。7月中旬に長野県軽井沢町で開かれた経団連の夏季セミナーでは、主要企業トップから献金の引き上げを示唆する発言が相次いだ。
直後の参院選で自民党が圧勝し、参院で野党の議席が自民・公明の与党の議席を上回る「ねじれ」は解消。「決められない政治」が続いてきたことにいらだちを募らせてきた財界トップの口もなめらかだ。この機会を生かして政権を安定させ、安倍晋三首相が進める規制改革や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉を後押しする空気が広がっているのだ。
2009年の民主党政権誕生後、経団連に加盟する大企業は、自民党への献金を大幅に減額してきた。特にリーマンショック後の円高で国際競争力を失い、業績が大幅に悪化した電機業界が顕著だった。経団連首脳の一人は「アベノミクスによる円安効果で電機業界も業績悪化に歯止めがかかっている。献金額は業界の横並び意識が強く、今年の献金額はリーマンショック前の水準に戻るのではないか」と話す。
評価の対象は自民・公明に絞る
その地ならしになるのが政策評価だ。経団連は9月にも公表する見通し。過去の政策評価は、主要政党の政策や実行度合いと経団連の政策提言を照合し、その合致度をA~Eの5段階で評価していたが、今回からは対象を自民・公明の政権党に絞る可能性が高い。
今春以降、会長・副会長ら首脳が参加する会議で「野党について政策の実行度合いを判断することはできない」(大手機械メーカー首脳)との声が出ており、両党に対する事実上の「信認投票」の色彩が濃くなる。
政権による成長戦略の策定や、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加決定を受けて、評価も比較的高得点になることは確実だ。
米倉弘昌経団連会長は「政治資金集めの旗振り再開ではない」と説明。経団連が各企業に献金額を割り振り、経団連の力の源泉ともいわれたあっせん献金斡旋の再開もしないと明言している。だが、経団連事務局や会員企業の中には経団連による献金あっせんの再開を期待する声もある。今回の政策評価が再開論議の呼び水になることは間違いなさそうだ。