EUは日本向けに自動車輸出を増やしたい
米国がTPP交渉を主導し、EUがTPPに推される形で米欧FTAの協議入りに踏み切ったように、米国、EUともに最大の関心を払っているのはアジア太平洋地域だ。
この地域はいまや、世界経済をけん引する勢いで急成長を遂げている。米欧は当然、この地域を念頭に置きながら、自らに利する高いレベルの規制や基準づくりに取り組むことになり、その動向がTPP交渉に多かれ少なかれ響いてくるのは必至だ。
そうした中で、EUが注目するのは自動車分野。交渉の成り行き次第では、この分野で大きな隔たりがある日欧EPA交渉に響いてくるからだ。日本向けに自動車輸出を増やしたいEUは、環境や安全基準などの規制緩和を日本に要求している。日本はこれを拒否しているが、仮に米欧FTA交渉で同様のテーマについて米国が譲歩するようなことになれば、EUが日本に一段と強く譲歩を迫る可能性は高まる。
日本は、「日中韓FTA」交渉や東南アジア諸国連合(ASEAN)のほか、中国などが参加した東アジア地域包括的経済連携(RCEP)にも加わっており、同時並行で進むさまざま交渉をにらみつつ、戦略的な対応が必要になっている。