ひこにゃん、せんとくん、くまモン――ゆるキャラ「人気No.1」の地位は、これまで何度も入れ替わってきた。ゆるキャラ戦国時代、「ポストくまモン」をうかがう次世代のエースはいるのか。
バリィさん? ふなっしー? 各地の強豪が名乗りを上げる中、注目を集めているのが愛知県岡崎市の「オカザえもん」だ。キモかわいい……をちょっと通り越したデザインが大受け。全国区でのブレークも目前だ。
年齢は41歳、妻に逃げられ4歳の息子を育てる
「あっ、オカザえもんだよ!」
「わー、気持ちわるーい(笑)」
2013年8月7日、炎天下の東京・原宿に、若い女性たちの声が飛び交った。人だかりの中で手を振っていたのは、岡崎市からはるばるやってきた「オカザえもん」だ。この日はオカザえもんの「撮影会」で、会場のキャラクターショップ前にはたちまち数十人が集まり、カメラを向ける。
とはいえ、通行人たちからの反応からうかがえるとおり、なんともその出で立ちは一風変わったものだ。
ゆるキャラといえば、今大人気のくまモンのように、思わず抱きつきたくなるような丸みを帯びたシルエット、それにかわいらしい顔立ちが一般的だ。ところがこのオカザえもん、体つきは普通の成人男性並み、顔もやけに中央に寄ったぎょろ目で、胸には大きく「崎」の文字が。体型の違いなどもあり、特にほかのキャラたちと並ぶと、異様なほどの存在感を発揮する。
しかも「設定」によれば年齢は41歳、4歳の息子を育てるバツイチの男やもめだ。好物は地元の名物「岡崎まぜめん」などで、ジャズ音楽や現代美術鑑賞を趣味とする渋い一面も。いずれにせよ、およそ「ゆるキャラ」らしくない。
ブレーク中「ふなっしー」に次ぐ2位
元々は2012年11月、アーティストの斉と公平太さんが、市の美術展に出品したことが始まりだった。「最初は『気持ち悪い』変なキャラクターとして、市民も遠巻きに観察して」(岡崎市ウェブサイト)いたというが徐々に地元で人気が高まり、13年4月からは晴れて市から「岡崎市アート広報大臣」に任命され、8月から開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2013」のPRを担うこととなった。
「地域でゴミ拾いに参加するなどの活動ぶりや、市のPRへの貢献もあり、地元でも好意的な声が増えています。グッズを販売しているお土産店などにも、多くの方が来てくださっているようです」(市の担当者)
ネットでも、「キモい」とも称されるなんともいえない出で立ちが話題を呼び始め、急速に認知度が高まりつつある。8月6日に結果発表された「ご当地キャラ総選挙2013」では、千葉県船橋市の「非公認」キャラとしてブレーク中のふなっしーに続き、2位に食い込むまでになった。
子どもに怯えられてもめげない
人気の秘密はどこにあるのだろうか。再び、東京・原宿に戻る。礼儀正しくお辞儀をしながらオカザえもんが登場すると、歓声を上げたのは多くが若い女性たちだ。中には、オカザえもんとおそろいの「崎」シャツを着た熱心なファンもいる。
グッズの販売コーナーにも、小・中学生~20代と見られる「女子」たちの姿が目立つ。市の担当者も「小さいお子さんや若い女性に特に人気」と分析するように、その異色の出で立ちが一種の「キモかわ」として受け入れられているようだ。まじまじと見つめた後、「……めっちゃカワイイじゃん」とつぶやく人もあった。
ただしその独特の雰囲気ゆえか、中には泣き出す赤ちゃんや、露骨に警戒して近づこうとしない子どもも。オカザえもんはちょっと戸惑いながら(表情はわからないが)、めげずに愛想を振りまいていた。