イスラム市場開拓では、「ハラル認証」取得が前提
こうした「イスラム仕様」が全国に拡大中で、▽2012年春からイスラム教徒向けの「ハラル御膳」を開始(京懐石の老舗料理店「美濃吉」=京都市)▽豚肉などの食材を使わないラーメン提供開始(新横浜ラーメン博物館)▽要望があれば客室にメッカの方向を示す矢印を設置し、ひざを乗せる絨毯も貸与(東京・帝国ホテル)▽礼拝場所として会議室を提供し、メッカの方角を調べるコンパスも貸し出し(北海道留寿都村の「ルスツリゾート」)などの動きがある。
イスラム圏の観光客誘致は訪日外国人を2030年までに3000万人(2012年は836万人)とする政府の計画を進める上でも重要な位置づけにあり、2013年6月に東南アジア向けの査証(ビザ)の発給要件緩和を決定。タイ、ベトナムやフィリピンのほか、マレーシアは訪日客のビザを不要とし、インドネシアについては数次ビザの滞在日数(15日間)を7月1日から最大30日まで延長した。
さらに、観光庁は飲食店や礼拝所のガイドブックを作製したり、自治体などを対象にしたセミナーを開催したりしている。日本アセアンセンターも4月1日からムスリム観光客の受け入れに関するデジタル・マニュアルの提供を開始して、民間の取り組みを後押ししている。
イスラム市場開拓では、「ハラル認証」を取得するのが前提になる。訪日観光客の食事と同様、豚やアルコール成分など、イスラム教の戒律に則して製造していることの証明で、各国の宗教団体などが製造工程などを調べて証明書を発行する。