政府は2013年8月8日、作家で経済評論家の堺屋太一氏(78)を内閣官房参与に起用すると発表し、同日、安倍晋三首相が辞令を交付した。堺屋氏と言えば、日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)のブレーンとして知られた存在で、今回の起用を通じて安倍政権と維新の会との「橋渡し役」を期待されているとの見方も出ている。
堺屋氏は旧通産省(現経産省)で、官僚時代は日本万国博覧会(1970年)を手がけて成功に導いたことが有名だ。小渕恵三内閣では民間人枠から経済企画庁長官として入閣。00年には、現在の内閣府が行っている「景気ウォッチャー調査」を発案したことでも知られている。
成長分野について助言や情報提供を行うことがミッション
菅義偉官房長官は8月8日午前の記者会見で堺屋氏の起用理由を
「経済企画庁長官や内閣特別顧問を務めるなど、経済分野において優れた見識を有している」
と説明。成長分野について助言や情報提供を行うことがミッションだ。この日の会見では、堺屋氏以外にも平田竹男・早稲田大大学院スポーツ科学研究科教授を健康・資源戦略分野で内閣官房参与に起用することが発表されている。これで安倍内閣の参与は11人。
堺屋氏と橋下氏は以前から近い間柄で、08年に橋下氏が大阪府知事選に出馬した際は堺屋氏が全面バックアップ。11年には橋下氏との共著「体制維新―大阪都」(文春文庫)を出版し、12年12月に行われた衆院選に出馬した維新の会公認候補の選定委員会にも名を連ねた。今でも堺屋氏は大阪府市の特別顧問だ。
「批判に動じず、安倍首相は改革を成し遂げる必要があります」
この経歴だけをみると、安倍内閣とは多少距離があるように見えるが、堺屋氏は基本的にはアベノミクスを後押しする立場で、「週刊現代」13年5月4日号では、
「アベノミクスにとって最大の難関は、『第3の矢』と呼ばれる成長戦略の実現です。第11の矢・金融緩和、第2の矢・財政出動までは、出来合いの矢を番(つが)えて射るようなものです。しかし、第3の矢は、既得権を外して造らねばならない。そこでは既得権益集団の大きな抵抗が予想されます。その中心となるのが、官僚システムです」
と分析。官僚機構の動向に左右されないように注意を促しながら、
「批判に動じず、安倍首相は改革を成し遂げる必要があります」
とまで述べている。
維新と自民は「付かず離れず」続く
また、自民党と維新は「付かず離れず」といった状態が続いている。例えば橋下氏と松井一郎幹事長(大阪府知事)は参院選の1か月ほど前の6月6日、首相官邸で安倍晋三首相と菅官房長官に面会している。米軍新型輸送機MV22オスプレイの訓練を八尾空港(大阪府八尾市)に一部移転させる提案が主な話題だったが、それ以外の政策について議論された可能性もある。
菅官房長官は、堺屋氏が日本維新の会のブレーンだという点については、
「自民党政権の小渕内閣で大臣を務め、森内閣では特別顧問を務めた。非常に経済に精通しており、きわめて成長戦略を最優先にする安倍内閣にとって、大事な助言をしていただけるだろうと考えてお願いした。様々な参与とか、様々な分野で皆さまがそれぞれに活動していると思うが、安倍政権としては、その成長戦略の経済政策に、是非堺屋さんの知見をうかがって、何としてもデフレを脱却したい」
と述べ、堺屋氏から成長戦略についての知見を得ることの重要性を改めて強調した。