家庭用プリンターは10万円台、業務用高性能機は1億円
創業100年近くの老舗メーカーによる自慢の鍵でも、3Dプリンターでいとも簡単に複製できてしまう現実。日本国内でも3Dプリントのサービス業者は複数営業しており、個人向け3Dプリンターの販売も始まった。2013年8月5日付の日本経済新聞電子版によると、ビックカメラやヤマダ電機で売り出された製品は14~17万円程度。もちろんMITの学生のようにプリントする立体物の形状などをスキャンしてデータ化する技術が必要だが、手順を理解すれば誰でも同じようなことができるのではないだろうか。
J-CASTニュースは、3Dプリントサービスを提供するグラフィック社に電話取材を試みた。同社は11種類の素材を用意して3Dプリントの注文に応じている。鍵の複製はこれまで扱ったことがなく、プリマスを見ていないので何とも言えないと前置きしたうえで、一般的な鍵なら技術的には可能だろうと話した。
同社の特徴は、樹脂だけでなく銀や真ちゅう、ステンレスといった金属素材を扱っている点だ。つまり金属で鍵を3Dプリントすれば、実用に耐えうるのではないかとの疑問がわく。担当者に聞くと、「寸法誤差を考えるとステンレスでは難しいかもしれません。ただ銀や真ちゅうなら誤差が少ないので高い精度の複製がつくれる可能性はあります」と説明した。値段は数万円ほどになると見積もる。とは言え、実際に注文を受けるか否かは別の話になるだろう。
では、市販の家庭用3Dプリンターを買って自分で作れるだろうか。グラフィック社の担当者は「無理でしょう」と答えた。そもそも素材が金属でなく樹脂オンリーなので、実用には向かない。しかもプリントの方法は「ソフトクリーム」のように樹脂を積み重ねていくので段差が生じるのは避けられず、また誤差も大きい。一方、同社で使用する金属素材対応の高性能3Dプリンターは、「価格が1億円ほど」だと明かした。出来上がりに差があって当然だろう。
将来はともかく、現時点では3Dプリンターを使って自宅を「何でもつくれる」場にするのは難しいようだ。