消費税12~16%まで引き上げか
消費税率15%は財務省の意図でもある。東日本大震災直後に、不謹慎にもホップ、ステップ、ジャンプ増税計画がいわれていた。震災増税がホップ、社会保障増税がステップ、そして財政再建増税がジャンプだ。今、とうとうステップの直前まで来ている。ちなみに、民主党野田政権の時に、消費税増税を織り込んだ中期財政試算では、10%まで消費税増税しても2023年度においてもプライマリーバランス対GDP比は、▲0.9~▲2.7%である。この赤字を解消するためには、消費税増税を2~6%しなければいけないというのが、財務省の意向である。つまり消費税率は12~16%まで引き上げるということだ。
政府は8月8日、中期財政計画を閣議了解したが、安倍政権での中期財政試算の詳細なものはまだ公表されていない。漏れ聞く話によると、10%まで消費税増税を織り込んだとしても、まだプライマリーバランス赤字が残るという。どうも、野田政権の中期財政試算とあまり大差はないようだ。アベノミクスの効果が出ているにもかかわらずである。一つのポイントは、安倍政権でも名目成長3%、実質成長2%と野田政権とほぼ同じなのだ。これは、インフレ目標が2%になったことと整合的でない。インフレ目標は消費者物価であるが、名目成長と実質成長の差はGDPデフレータで両者は違うと、財務省筋は必死で反論するが、マイルドインフレ下で両者はほぼ同じである。
IMFの年次審査報告書は財務省の息がかかっているとしても、IMF本体の理事会では、数名の理事が消費税増税が成長に悪影響があるかもしれないとの懸念を表明している。これは、IMFが各国に緊縮財政を求めすぎたことへの反省でもある。ただし、こうした報道はあまりない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。